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カナディアン・ブルーズ〜文明は真ん中に、文化は端っこに(その3)

 せ っかく、車中で聴こうと用意していたのに、メアリー・ゴウシェ(Mary Gauthier)のベスト盤がアマゾンから届いたため、翌日まわしになったレイ・ボネヴィル(Ray Bonneville)の3枚を聴く。

 あ らためて思ったけど、まるで、J・J・ケール(J .J .Cale)か、精神状態がいい時のエリック・クラプトンのような、そのリラックスした嗄れ声が実に気持ちいい。

 しかもこのレイさん、ギターもボーカルも素晴らしいですが、ハモニカ吹きなのです。これが控えめだけど、その音楽に渋みと深みを与えてくれてます。

 レ イさんは、カナダのトロント生まれだが、生まれ故郷に留まらず、世界中を旅する流浪のミュージシャン。行きましたところはニューオリンズ、オースティン、アーカンソー、アラスカ、ボストン、果てはおフランスのパリに至るまでさすらっているが、とくにストリートライブやクラブのギグを通じてその水と空気にどっぷり浸かったニューオリンズに強く影響されたそうである。なるほど、彼の音楽スタイルは、そのタップリの湿り気とルーズな空気が特徴である。そのレイドバックな雰囲気を彼のハモニカがいやが上にも盛り上げていく。

 僕 が持っている彼のCDはこの三枚。

 左の二枚のプロデュースは、同郷のカナダ人コリン・リンデン(Colin Linden)。彼はブルース・コバーン(Bruce Cockburn)やルシンダ・ウィリアムス(Lucinda Williams)レオン・レッドボーン(Leon Redbone)などと共に活動しているが、彼自身のソロアルバムは僕の愛聴盤。

 実 は、この2枚のアルバムのミュージシャンクレジットを見ていて、あっ!という発見があった。それはバディ・ミラー(Buddy Miller)の新作について書いた3月10日の日記「あまりのナイスバディにノドごっくん!涙がポタリ」の中で触れた三人のドラマーの内一人だけ、その名前に記憶があるのに誰のバックで叩いていたのか思い出せなかったドラマー「ブライアン・オーイングス」(Bryan Owings)がこの2枚で素晴らしいドラムを叩いているのを見つけたのである。そっか!レイのアルバムだったんだ!あとでネットで調べたら、バディのアルバムでも活躍していた。僕はバディのドラムは「ブレイディ・ブレイド」(Brady Blade)とばかり思い込んでいたのだが、今回バディの過去のアルバムののクレジットを見たら、確かにブライアンもたくさん登場していました。

 ど ちらのアルバムも、実に何ともレイドバックした雰囲気で心地よいが、やはりかすかに漂うハモニカに、ついつい哀愁を感じてしまう。簡単にいうと「お酒を必要とする」度数が極めて高い、運転時にはまったく噴霧器(不向き)なアルバムなのでした。

 そ して右はレイの最新作「Goin' by feeel」・・なんとプロデュースはガーフ・モリックス(Gurf Morix)である。もちろんその音楽世界は先の2枚と同じだけど、ガーフのそれは、リラックスしているのに、どこか先鋭的で緊張感があり、ゆったりしているのにスピード感がある。

 ド ラムは、ガーフのお抱えさん、リック・リチャーズ(Rick Richards)とジェフ・アーセナル(Geoff Arsenault)(この人は「コリン・リンデン」プロデュースの2枚でも素晴らしくパーカッシブでカラフルな太鼓を叩いている)・・そしてイライザ・ギルキーソン(Eriza Gilkyson)が素晴らしいコーラスで2曲参加している・・・レイの最高傑作!

 僕 の「2007年CDベストテン」の第5位はガーフの「DIAMONDS TO DUST」だった。このアルバムは、ガーフの他には僅か三人しか参加していない、実にシンプルなもの。ドラムのリック・リチャーズはともかくとして、一人はコーラスのパティ・グリフィンだが、もう一人がハモニカのレイ・ボネヴィルなのである。二つのアルバムは制作時期も同じ頃なので、アルバムの底を流れる哀愁を帯びた通奏低音が共通している。ガーフとレイ、二人の相性は誠によろしい。

 だ が、なにゆえ、湿地帯もない北国カナダにかくも素晴らしいブルースミュージシャンが?

 思えば、まだ「ぶらきぼうの言いたい放題!」というタイトルであったこのコラムに僕が記載し始めた最初の音楽にまつわる文章は「カナダ・南部」だった。それはカナダの南部のことではなく、カナダとアメリカ南部との不思議な(と思ったのは僕だけだが)関係(カナダ人とアメリカ南部ミュージシャンが結びつくとミラクルかつマジカルな音楽世界が出現するのは何故?)についての妄想だった。妄想だけに文章はとどまるところを知らず、めちゃくちゃ長くなってしまい、前編と後編にわけざるを得ないことに・・・

「カナダ・南部」(前編)
http://www.net-sprout.com/iitaihoudai/053canada.html
「カナダ・南部」(後編)
http://www.net-sprout.com/iitaihoudai/054canada.html

 実 はこのところの日記のサブタイトル「〜文明は真ん中に、文化は端っこに」は、その日記のサブタイトルにしようか、と思ったタイトルだった。実はこのところ僕がよく聴く音楽によって、また、そのことを感じつつある。

 続きはウェブで!・・・「って当たり前だろ!」「うぃ・・」


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