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ライブハウスと麹菌〜文明は真ん中に、文化は端っこに(その2)

 「 レヨナ」のライブに行ったことは書いた。その時「レヨナ」に「FUNKIST」(ファンキスト)という実にナイスな若いバンドを紹介した。

 http://funkist.info/

 素 晴らしいライブ後だったので握手攻めにあっている「レヨナ」の時間が空くのを待っている間、「ファンキスト」のギタリスト「宮田泰治」と立ち話。彼とは前に一回お酒を飲んだことがあり、彼自身は東京育ちだが、ご両親が神戸生まれである事を知っていた。お母さんはフラメンコダンサーだそうである。

 http://funkist.info/members/

 彼 が「この間、ついに念願の神戸チキンジョージでライブやってきました。すごくいい小屋だったです。そこに大村憲司さんのギターが飾ってありました!感激しました!」というのを聴きながら急に、神戸出身のギタリスト「大村憲司」が10数年以上前、僕にその神戸チキンジョージでのライブのおりに語ってくれた話を思い出した。

 「 ・・・ライブって、小屋によってまるで演奏が違ってくるんだよね。それは、日本酒が、造り酒屋に棲みついているこうじ菌によって、味がまるで変わるのに似ているんだ。米や水が同じでも、住みついている麹菌によって違うだろ?ライブハウスも小屋によって棲み着いている麹菌は全部違うわけや・・日本酒好きの君ならわかると思うけどさ。だからライブっていくらリハを重ねても、その小屋に流れているこうじ菌の匂いを嗅いだ瞬間、がらっと変わることがあるんだよ。それが楽しかったりもするんだけどね。特に地方の小屋はネ!」

 話 を聞きながら、さすが師匠の話は、いつもながら奥が深いなぁ、と思っていると

 「・・・でもな、最近できた小屋や建て替えた小屋には、その香りがなかったり薄かったりするんだ。「おーい、こうじ菌、どこ行ったん?」と言いたくなるような小屋が増えていくのは、俺たちみたいなライブ上がりのミュージシャンにとってはこの上なく、寂しいことなんだよ。そういうところで演奏すると無理矢理こちらのほうから何かを出そうとして消耗するんだな・・それは客にも伝わるのがわかるから、終るとしんどくなる。酒蔵の杉樽をステンレスタンクに変えた瞬間、前の日本酒の味わいが消える。前の味に戻そうとして色んなものを添加する・・・でもそれは似てても同じ味じゃないわな・・それに似てるか・・」

 な んだか、急に胸がせつなくなって、返す言葉が見つからない。環境悪化によって生息地域を追われる希少動物の嘆きのように感じたのだ。先の日記に書いた「T・ボーン・バーネット」のインタビューや昨日の日記にある「ルイス」のアナログ話を想起させるものがある。

 実 は最近、たくさんのライブハウスが都内にできているが、その多くは出演者にノルマを課すことによって赤字を出さない仕組みになっている。当然そこに”こうじ菌”が棲み着くことはない。そこでは、こうじ菌によって醸し出される「旨し酒」が育たないように、「旨し」ミュージシャンが育つこともない。

 こ の間、六本木から狸穴の方に車を走らせていたら、大村が「デビュー25周年記念ライブ」を行った六本木ピットインがあとかたもなく消えていた。

 だ が、地方にはまだ、そんなこうじ菌を大切にしているライブハウスがある。東京都下(23区内)では、ほぼ全ての造り酒屋は廃業しているが、地方にはまだまだ、杉樽で酒を醸している蔵本が多く残っているように。

 だ んだん、本来のタイトル「文明は真ん中に、文化は端っこに」に、話が近づきつつあるな・・ホッ!


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