vol.02


と、これは天才の誉れ高い女性ヴォーカリスト、吉田美奈子。
和製ローラ・ニーロとも呼ばれている。
彼女は自分のことを「ボク」といい、少年のような口調で話す。

「ボクはずーっとソロでやってきたから楽屋にいてもつまらないんだ。
 だから本番前はステージにきて心を落ち着けてるんだ。」
「・・・・」
「そういえばさっき君たちのリハ見たよ。けっこうカッコ良かったよ、コーラス。
 演奏も面白かったけど。
 ・・・君たちってココナッツバンクのメンバーなの?それともコーラス専門のグループ?」

・・・・なんでこの美奈子って人は一人でよくしゃべってるんだろう。
    無口だって評判のはずなんだけどなぁ・・・・
「あの、違うんだけど。僕たちはシュガー・ベイブっていうれっきとしたバンドで、
 今回は大瀧さんが・・・」
「お〜い、クマ〜」
と、ドラムス担当の野口明彦が走ってきた。
「楽屋でムラマツくんがさがしてたぞ。」
「わかった。じき楽屋にもどる。」

美奈子は言う。
「じゃあボクはもうすぐ出番だから。君たちもがんばって。」
「あっ、それじゃ話のつづきはあとで。」


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