のちに、クマ、ター坊、ムラマツ、に美奈子を加えた四人はスタジオでのコーラス仕事を数多く手掛けるようになるのだが、この時はまだ誰もそんな事になるとは思いもよらなかった。
「ター坊、そのアブラ〜のラのとき、ちょっと高い。」 「ブー、・・・はい」 「ムラマツくん。」 「はい」 「ピッチも何なんだけど、リズムもひどい。全体的に。」 「まだ腹が・・・でも、わかった。」 楽屋のすみで三人がコーラスの仕上げをやっている。山下のチェックがきびしい。 それもそのはずだ。こんなに大きな会場でやるのは始めてなんだから。 その横でベース担当の鰐川己久男と野口明彦がパーカッションをあわせている。 かれら二人は今回、ココナッツバンクのパーカッション部隊として参加する。 なんで楽屋のすみでやってるかというと、ココナッツバンクや他の先輩ミュージシャンたちにまだ遠慮があるからだ。「ひけめがある」ともいう。「なじめない」ということもあるだろう。 バンドとしてステージを踏んだのは、まだたったの2回だ。 僕らはプロなんだろうか。 |
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