vol.03


のちに、クマ、ター坊、ムラマツ、に美奈子を加えた四人はスタジオでのコーラス仕事を数多く手掛けるようになるのだが、この時はまだ誰もそんな事になるとは思いもよらなかった。

 「ター坊、そのアブラ〜のラのとき、ちょっと高い。」
 「ブー、・・・はい」
 「ムラマツくん。」
 「はい」
 「ピッチも何なんだけど、リズムもひどい。全体的に。」
 「まだ腹が・・・でも、わかった。」

 楽屋のすみで三人がコーラスの仕上げをやっている。山下のチェックがきびしい。
それもそのはずだ。こんなに大きな会場でやるのは始めてなんだから。
その横でベース担当の鰐川己久男と野口明彦がパーカッションをあわせている。
かれら二人は今回、ココナッツバンクのパーカッション部隊として参加する。
 なんで楽屋のすみでやってるかというと、ココナッツバンクや他の先輩ミュージシャンたちにまだ遠慮があるからだ。「ひけめがある」ともいう。「なじめない」ということもあるだろう。
 バンドとしてステージを踏んだのは、まだたったの2回だ。
 僕らはプロなんだろうか。


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