「Tarkus / Emerson, Lake & Palmer」
より良い演奏をするには?アドリブ vs 決めフレーズ by Ohji
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楽を演奏していて、良く使う、あるいは良く聞く言葉の一つに「アドリブ」があります。辞書には「即興的に歌う、演奏する」と書いてあるだけですが、一体どういうものをアドリブというのでしょう?またどうしたらすばらしいアドリブ演奏ができるようになるのでしょう?ポップ・ミュージックではコード進行や楽曲の雰囲気に即した即興演奏のことをアドリブと呼ぶようです。どんなジャンルのプレイヤーでも「できるようになれたらいいな」と思うであろうアドリブですが、今回紹介するEmerson, Lake & Palmer(以下ELPと省略します)のキース・エマーソンは自分の演奏はアドリブではないと興味深い発言をしています。 |
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すが、彼の演奏を聴いてみると、本当に次から次へといろいろなフレーズが出てきて、どう考えてもアドリブのように思えます。それにブートレグやビデオの演奏を聴いてみると、同じフレーズでも歌い方やフレーズ語尾の処理などは様々に変化していて、即興の味付けが入った演奏になっています。どうやら彼の言っているアドリブとは「何も考えずにソロを弾きはじめて、最後まで即興で弾ききる」ということのようです。 |
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はアドリブか、そうでないのかはさておいて、ソロというのはどのように作っていくのかを考えてみましょう。良い例なので、このアルバムの「ストーンズ・オブ・イヤーズ」の間奏を聴いてみます。すると |
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・その楽曲の中で特色的なメロディまたは何度か出てくるフレーズなどを徐々に弾き崩していく
・元のリズムが8分音符だったものは3連系、3連系だったものは16分音符にあてはめて弾き、歌い方を崩す
・盛り上がってきたら、2倍のテンポでのフレーズに移行する |
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などが特徴です。これらはジャズのアドリブではごくあたりまえのことで、彼がジャズを勉強していることが判ります。 |
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ぜ彼はアドリブをしないのでしょうか?彼の場合、あらかじめフレーズを決めてしまい、レコーディングやツァーに向けて徹底した練習をするのだそうです。
特にツァーの場合、数千人という単位で聴衆が集まるのですから、「昨日と今日とではずいぶん演奏のできが違ってしまった」などと言うわけにはいきません。あらかじめフレーズを決めておくのは賢明な方法と言えるでしょう。
それではフレーズを決めておくのと、何も考えずソロなどに向かうのでは演奏内容にどのような違いが出てくるのでしょうか?分かりやすいように、フレーズを決めたものを決めフレーズ、そうでないものをアドリブと呼ぶことにします。 |
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ずは先ほども書いたとおり、決めフレーズは出来、不出来があまりないということがあげられます。もちろん調子が悪ければ、同じフレーズでも演奏がぎこちなくなるようなことはあるでしょうが、ある日はまるで緊張感のないロングトーンに終止し、次の日はうってかわってすばらしくスピード感のあるアドリブができたなどということは起こり得ません。 |
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に決めフレーズでは、必ずその曲にあったフレーズを演奏することができます。もちろんあらかじめそういうメロディなり、フレーズなりを考えておく必要がありますが、アドリブ時では考えながら、あるいは感じながら弾かなくてはならないのに対して、フレーズを考える時は余裕を持ってじっくりと考えることに集中することができます。このため楽曲のメロディとはなんら関係のない雰囲気のアドリブをえんえんと演奏してしまうというようなことは避けることができます。 |
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っともアドリブといっても、たいていはリハーサルをくり返しているうちに演奏のおおまかなストーリーが、決まってくるのが普通で、毎日全く真っ白な状態でアドリブ演奏を始めるというのはジャズのかなり変わった人でも、ちょっとむずかしいことです。 |
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方、まるっきりアドリブで演奏するには、次々と湧き出るようにフレーズを弾いていく必要があり、しかも全体にまとまりのあるものになっていなければなりません。そのためには |
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・様々な音楽を聴いて、いろいろなフレーズの要素を自分のものとして蓄積している。
・音楽理論を本などで勉強するだけでなく、実際に楽曲にあてはめて理解している。構成などについても実際の楽曲やアレンジから学んでいる。 |
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のどちらか、あるいは両方が必要です。 |
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めフレーズの場合でも、考える時間はたっぷりあるものの、より良いフレーズを創り出し、表現力豊かに演奏するには、やはりアドリブに必要な2つのポイントが重要です。どちらにせよ良いインストゥルメンタル部分をクリエートするには日頃からいろいろな音楽を聴いて、そのフレーズを自分の楽器で弾くことにより、キーやコードとどのように関係しているのかを、自分なりに理解しておく必要があるのです。 |
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「Tarkus」収録曲 |
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1. Tarkus
a. Eruption
b. Stones Of Years
c. Iconoclast
d. Mass
e. Manticore
f. Battlefield
g. Aquatarkus |
2. Jeremy Bender
3. Bitches Crystal
4. The Only Way (Hymn)
5. Infinite Space (Conclusion)
6. A Time And A Place
7. Are You Ready Eddy |
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