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02. バンドと仕事:後編


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 2回めのお悩みさんは先週に引き続き、音楽関係の専門学校を卒業して、社会人になった22歳の方です。先輩のOBや在学中にお世話になった先生方の好意もあって、アルバイトをしながらバンドをいくつかかけ持ちし、ちょっとした音楽の仕事ももらえるようになっています。
 ではさっそく前編の「お仕事」に続いて、今回は「バイトしながらバンド」について考えて行きましょう。

 まず、なんといっても良いのは、自分のやりたい音楽ができるということです。もちろん「自分の好きなジャンルだけを演奏していればいい」ということが、最初に挙げられるでしょう。
 口の悪い人たちには「バカの一つ覚え」と呼ばれるかもしれませんが、地道に続けていれば立派なバンドになれるかもしれません。
 また、一時的に楽しいだけではなく、自分(達)の音楽を徹底的に追求することができます。いろんな要素を自由に盛り込むことができるからです。
 「お仕事」の場合、仮にフメンがないとしても、いろいろな指定があるでしょうし、コード譜に書いてある雰囲気の演奏からはずれることはできません。せっかくジャズを勉強しても、それをアドリブに活かすことはごく稀にしかできないでしょう。

 バンドのメンバーが決まっていて、たいていは友人関係にあり(たとえ逆に仲が悪いとしても)、長時間一緒に演奏していると、メンバー間のコミュニケーションがとり易くなります。そのため、自由に楽曲を作り、アレンジをすることができ、話し合いでお互いに納得すれば、各メンバーの見せ場を作るようなこともできます。

 バッキング・ボーカルやダンスなど、演奏以外のファクターも自分達の思いのままです。自分が興味を持っていないことを気にする必要もありません。
 バーなどお酒が飲める場所で、オールディーズを生演奏で聴かせるお店ではたいていユニフォームが決まっています。楽屋はほとんどが屋根裏部屋であるかのように狭く、下手をすると床から天井まで人間の背丈より低いので、かがんだ状態で入り口を入り、一度イスに座ったら、そのままの状態でユニフォームに着替えなくてはならないなんてこともあります。
 こういうことは自分のバンドをやっている限りあり得ないことでしょう。ライブハウスでも楽屋が狭いところは多いと思いますが...

 メンバー間の趣味が似ていたり、共通の友人が存在するので、自分に必要な情報をゲットするのも、簡単です。
 また時間的な制約が少ないので、ライブやイベントなどへ行ったり、スタジオで練習したり、バンドでミーティングしたりするのも、いつでも自由にできます。
 「そんなことは音楽の仕事をしていたって、同じじゃないか」と思うかもしれませんが、その場合、時間的には「お仕事」が最優先となってしまうため、かなり時間的な制約を受けます。ちょっとしたタイミングのずれで、いろいろなことができなくなってしまうことが多いのです。

 では逆に「バイトしながらバンド」の良くないところはどうでしょう?まずバイトの時給は音楽仕事にくらべるとかなり安いので、長時間働かねばならず、生活に追われ、時間がなくなります。
 高い時給を求めて、詐欺にあったり、危険な仕事をバイトに選び、命を失ったりすることもあります。
 睡眠時間も減ってしまうでしょうから、練習時間は激減してしまうでしょう。また値段の張る楽器やエフェクター、フメン類、理論書などを買うことも無理でしょうから、音楽的には古い人になってしまうかもしれません。

 自分では自分やバンドの欠点が見えにくいということがあります。だれかNet-Sproutのファーマーのような人が一緒にいてくれて、バンドを見て、聴いてくれれば、アドバイスをもらえるでしょうが、そんなことはあまりないでしょう。
 また仕事と違って、「こんなフレーズを演奏しなさい。」と命令したり、知らないコードネームの意味を教えてくれる人もいないので、バンドの音楽性が向上しにくい環境といえます。
 これはもちろん、ミュージック・スクールヘ行けば解決することだけど、お金がかかります。それだけのお金があって、スクールへ行けても、

 1. 勉強をさぼってしまい、スクールに行かなくなる。
 2. 一人でスクールに行ったら、他のメンバーと音楽のレベル差がついてしまい、話ができなくなる。
 3. メンバー全員でスクールに行こうとしたら、あるメンバーだけ行くお金がなく、他のメンバーと話ができなくなる。
 4. メンバー全員でスクールに行ったら、ある楽器のメンバーだけピアノを弾かないため、他のメンバーと話ができなくなる。

 というような障害が起こってしまうのが普通です。あるメンバーが脱退したり、お金が無駄になったりという良くない結果を招きます。

 結論としてはどちらが良いのか?ということではなく、バイトをしながらバンドで自分の音楽を追及し、煮詰まった場合にはそれをほかのメンバーに責任転嫁するのではなく、 音楽の仕事をして、情報や技術、理論を取り入れるなり、得たお金で新しい楽器を購入するなりして、自分をフレッシュな状態に持っていくのが正解だと思います。
 物事なんでもそうですが、バランスが大切で、偏っていてはダメということです。
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