前のページへ 次のページへ 「エートス」こいて、もぉ〜!トップへ Net-Sproutトップへ
イヤホンが苦手なわけ

 配 偶者がマックのコンピューターを購入したところ、「iPod touch」が無料でついてきた! 配偶者は i- Phone愛用者なので、iPod はもはや無用の長物・・・ということで、僕がもらう事になった。ありがとね!

 あ れほど流行したウォークマン(もちろんカセット時代の、ですよ)の使用経験すらない僕の生まれて初めてのポータブルミュージックキャリア。

 で も面白そうなガジェットなので、とりあえず手持ちのCD10枚ほどをコピーする。実はCPを通じてのコピーは生まれて初めての経験である。ドキドキ。あれま、ジャケット写真も取り込める!便利ですねぇ・・って今どきの常識でしょうけど。

 先 週、上野で開催されていた「長谷川等伯展」を見にいった時、どうせ行列必至だろうし、時間つぶしに役にたつかも、と思い携行した。案の定の50分待ちだったので、音楽を聴いてみた。ちょうどリンゴ・スターのアルバム1枚聞き終わったところで、入場できた。

 だ が、やはりイヤホンで聴くのとスピーカーを通して聴くのでは相当な違いがある。なんというのか、耳骨ダイレクトでは音が腰までおりてきてくれないもどかしさがなんだかなぁ。特に日頃僕が好んで聴く音楽は”耳”じゃなく”腰”で聴かないと、体に効かない! とりわけアメリカーナとかブルースはそう。クラシックもそうだな。

 ス ピーカーから流れてくる音は、耳で聴いている、と思いがちだが、実は空気振動だから、音圧や音の波を、例えば髪の毛や、肌の産毛や目や鼻など「音楽」と認識しない器官も「振動音波」は受容している。おへそや腰などの下半身もおんなじだ。それらの五感すべてを通して受け止めた音の総量をとりまとめ、脳に「音楽」として認識させているのが「耳」というだけのことである。とくに低域は耳じゃなくて下半身が主たる受容体であり、それは空気振動ばかりか、床振動から足裏を通して伝わる音も合わせて拾い届けてくれている。音楽は下から上へ!であって、上から下へ!ではないように思う。

 だ から「耳」直撃のイヤホン聴きは、なんだかピンとこない。ライブ(ここでは目で聴く!という要素が入る)とは対極にあるもんですね。

 僕 の事務所ではスピーカー(写真左。「蕎麦打」(写真右)という素晴らしい本を書いた加藤晴之さんという方が作成した紙筒スピーカー・・・柔らかい音なのに低域もシッカリ出ます)から音楽が流れている。100%僕の趣味の音楽を聴かされているスタッフは「どうせならイヤホンで聴いてくれればいいのになぁ」と思っているかも知れないが、僕は純粋に音楽だけを聴くのではなく、電話音や、みんなのおしゃべりや笑い声やキーボードを叩く音などを含めて音楽を聴きたいのだ。言ってみれば雑音込みということになるのだが、「ある場所で音楽を聴く」という時には、音楽以外の音も排除できない要素なのである。だからそれらは「雑」音ではない。

 そ れは家でも同じ事。スピーカーから発せられた音が、1〜2メートル離れたところで聴いている僕の身体全体に伝わるまでには、様々な障害物(テーブルに無造作に積まれた本や酒瓶)があるし、ネコの鳴き声や携帯の呼び出し音も混じる。またそれら障害物や雑音は日によって変わる。だからこそ毎回聴いている音は違って聴こえるのだ。イヤホンではそういう楽しみがないように思う。

 と ころで我が家のスピーカーは今時珍しいほどデカイ!新宿のオーディオユニオンにフラっと立ち寄ったときに流れていた音にやられて即買いしたのである。メーカー名はない。ユニオンの技術者が部品を組み合わせて作成したオリジナルである。一番気にいったのは、ボリュームをかなり絞ってもちゃんとベースの”芯”が聴こえてくるところ。だから深夜、音を絞って聴いてもその音楽は十分「腰」まで届いてくれるのだ。ただ、家人には相談せず購入したので、深夜に帰ってきた配偶者がどでかいスピーカーに目をむいて、僕に牙をむいたのは言うまでもない。

 そ ういえば、街中でイヤホンをしている人(とくに女性)の1割〜2割は何も聴いていないそうである。つまり、「だれも私に話しかけないでね」「道なんか尋ねないでね」というコミュニケーション拒否の「音楽をきいているフリ」スタイルなんだそうな。

 そ もそもイヤホンが嫌いだから考えもつかなかったからビックリしたが、なかなかやるものである。


前のページへ 次のページへ 「エートス」こいて、もぉ〜!トップへ Net-Sproutトップへ