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文明は真ん中に、文化ははじっこに(その1)

 少 し前のコラムに書いた、イメルダ夫人の姪、じゃなかった「イメルダ・メイ」(Imelda May)のライバルたちの音源が届く。

 ま ず、訂正があります。先のコラムに「名前はちょっと忘れてしまった」と書いたバンドの名前は「キティ、デイジー&ルイス」という名前でした。そこで「出身はアメリカ」とい書いたのですが、これがとんでない間違いで、出身はイギリスのロンドンでありました。

 で もジャケットをご覧ください。このジャケってもろにアメリカ、しかも1940年代、50年代のアメリカ以外のなにものでもないでしょ!それにタワーレコードの試聴器で聴いた音楽は、ロケンロールにヒルビリー、スィング、ジャズ、ブルース、ハワイアン・・・これらのどこにイギリスが?だが、よくよく考えるとこれらの音楽はイギリスから渡ってきた要素が多分にあることに気づいてもよかったネ。

 こ の「キティ、デイジー&ルイス」( Kitty, Daisy & Lewis 以下KDL)は三人兄弟なのだが、年令は、なんと15才、18才、20才!平均年令17才というのは本当でした。なのにその音楽は、先ほど言ったように、まるで1940〜50年代のアメリカ音楽そのものである。それが別に奇をてらったわけでもなく、ただひたすらやりたい音楽をやりたいうようにやったらこうなりました、と言う具合に、ごくごく自然である。

 解 説(大鷹俊一氏)によれば、それも納得。お父さんは、U2やボブ・マーリー等を手がけたロンドンのマスタリングエンジニアであり、お母さんはポスト・パンク時代のイギリスインディーズシーンで活躍した人なんだとか。なかでもお父さんは、自身ギタリストで、古い楽器や音楽のコレクターだそうだ。しかも自宅にスタジオまであるのだが、そこの機材はアンペックスの8トラックやヴィンテージのマイクロフォン等すべてアナログ機材なのだそうである。こういう家庭環境で育てばこういう「恐るべき子供たち」が登場しても不思議ではない。

 ル イスはインタヴューに「古いものとデジタルのものとでは全くサウンドが違ってくるんだ。例えば、テープを使うとその時のエネルギーをしっかりとらえてくれる。でもコンピューターを使うと、なんというか薄っぺらい音になるんだ。だから僕たちはより良いサウンドを作り出すために40年代とか50年代の機材を使ったんだ。」と答えている。

 な んだか、以前に紹介した「T・ボーン・バーネット」(T・Bone Burnett)のインタビューのデジャビューのようだ。

 話 はがらりと変わって、昨晩「レヨナ」(leyona)のライブを渋谷の「デュオ」に見にいった。素晴らしい大人のライブを堪能。ドラムは沼澤尚、ギターはアイゴンという当代随一の実力バンドのサポートだったが、バンマスはベースの「鈴木正人」であった。「リトル・クリーチャーズ」(Little Creratures 以下「LC」)のベーシストである。

 彼 らは「イカ天」出身だが、当時僕がいたミディというレコード会社からデビューした。メンバー全員18才だったので、契約のため、ご両親に印鑑をいただく必要があり、それぞれの家庭にお邪魔したのだが、正人君の家で、彼のお母さんにいきなりビールを勧められて(自宅にビールサーバーがあった)ギョーテンしたことがある。お昼の2時ころ、しかも僕は車である。もちろん遠慮なく頂いたけど、何か。

 ラ イブ終了後楽屋でご挨拶。「ひさしぶり!」「わぁ、わぁ、ひさしぶり!」なんと昨年結婚したそうで、きれいな奥さんを同伴していた。「正人君、いくつになったの?」「もうすぐ38ですよ!」・・・そうか、あれからもう20年たつんだね。

 実 はこのイギリス出身の早熟兄弟三人バンドを聴きながら、同じく日本の早熟グッドタイムミュージシャン三人組「LC」のことを思い出していたその夜に、その一人に会ってしまったのも何かのご縁であろう。

 正 人君もそうだが、青柳拓次も栗原務もみな、ご両親が有名な音楽家、演出家、古楽器収集家だった。数あるイカ天出身バンドでもその特異なまでに高いクオリティと音楽的引き出しの豊富さの秘密の一端は、その家庭環境にもあったことは事実だろう。(そう言えば、CDジャーナル1月号のベストアルバム特集に青柳拓次が第一位に「カレン・ダールトン」を挙げていたこともついでに思い出す)

 も ちろんまだティーンエイジャーのKDLの音楽に、哀しみや陰りを聴くことはない。だがまったく屈託なくすくすく育った彼らがこの先、どのような困難や理不尽さに遭遇し、その音楽を変化させていくのかは僕の老後の楽しみである。

 本 邦の「リトル・クリーチャーズ」一派には、畠山美由紀嬢や渡辺琢磨君など素晴らしい逸材が揃っているが、彼らに是非「キティ、デイジー&ルイス」と一緒にライブしてほしいものである。

 と いうわけで、いつも通りタイトルだけ考えて書き始めたのだが、今日は全然タイトルにまで行き着かなった。

 果たしてたどり着くのだろうか。


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