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日の夜、"さて明日は車の中で何を聴きながら事務所に行こうかなぁ"
としばらく悩んだすえ、サム・ベーカーとレイ・ボネヴィルをバッグにいれた。哀しきハモニカが聴きたかったのだ。
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が今朝、玄関を開けたら偶然にもクロネコヤマトさんから「アマゾン様からお届けで〜す!」と差し出されたのがメアリー・ゴウシェの「GENESIS(THE EARLY YEARS)」であった。・・・「あ、来た」・・こちらを聴く事に。
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が実はこれ、二度目のオーダーである。すでに1月に入手し、愛聴していたのに、ある日ふと気づいたら行方不明!事務所や自宅を大捜索したのだが出てこない。誰かに貸した覚えもない。どこかにあるはずだが、ないものはない。生来ものぐさでめんどくさがり、整理整頓が苦手(でも「おかたづけの霊」が降臨、憑依すると突然、それこそ“憑かれた”ように整理整頓し始める)という典型的なB型気質・・・「またオーダーすればいっか!」と簡単にあきらめる。
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のアルバムは、メアリー・ゴウシェの既発売の3枚のアルバムと未発表数曲によるコンピレーションだから、オリジナルを聴けばそれですむのだが、選曲がいいのと、音がとてもよかったので、ないとなると無性に聴きたくなってしかたなくオーダーしたのである。
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らためて車中で聴いたけど、やはり素晴らしい選曲と曲順、それに音に感動する。曲は、もし僕がメアリーのコンピを作るとすればどれも絶対落とさないであろうものばかり。
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女の最新作は2007年発表の「Between Daylight and Dark」であるがプロデュースはそれまでプロデューサーであった「ガーフ・モリックス」から「ジョー・ヘンリー」に代わっている。
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ても丁寧に作られているし、ジェイ・ベルローズ、デヴィット・ピルチのリズム隊もカッコ良かったのだが、どこか物足りなさが残った。メアリーの歌は、取り扱いを間違うと、スパっと指を切り落とすような、ついうっかり触ると血がピュッと飛び散るような、そんな危険性を孕んだ抜き身の刀身のようなところが特徴であり、魅力である。
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が、ジョー・ヘンリーのプロデュース作品では、メアリーの血を吸ったむき出しの刀身のくもりはぬぐい去られ、しかもガラスケースに収められている鑑賞用の刀のようであった。
音楽は遠巻きにして、ガラス越しに眺める美術鑑賞品ではない。僕にはそこがもどかしかったのだ。
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が、ここにおさめられている楽曲はすべてそれ以前の作品から選ばれている。当然、ガーフプロデュース作品はその半分を占めているし、他もクリット・ハーモンのプロデュースであり、どちらも彼女の持ち味を生かしきっている作品ばかり。
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ンピレーションだから、もちろん新たなマスタリングが施されるわけだが、そのマスタリングエンジニアはなんと「レイ・ケネディ」!
レイは、言わずと知れたアメリカ南西部の大親分「スティーブ・アール」の代貸しであり、超強力なプロデュースチーム「Twang Trust」の相棒である。
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楽をよく理解している技術者と、技術をよく理解している音楽家が組むと素晴らしいプロデュースチームが出来上がるが、その中でもこの「Twang Trust」は、「T・ボーン・バーネット/マイク・ピアサンテ」、「ダニエル・ラノア/マルコム・バーン」らと共に世界最強力チームの一つと言えるだろう。
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の技術担当のレイによるリマスタリングによって、大げさに言えば、すす払いがすんだシスティーナ礼拝堂の壁画のように、テクスチャーがクリアに浮かび上がり、音の解像度も上がって奥行きを感じるので、それまで見えていなかった制作者の意図まで見えてくるようである。メアリーの歌世界が、これまで以上に痛いように聞き手の胸に突き刺さる。
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局行きの車中であらためて、どれもこれも名曲、傑作曲であるのを再認識し、ラスト近くに置かれている「Christmas In Paradise」では、スティール・パンが「ジングルベル」のメロディを奏でるところで、ついにたまらず涙腺がゆるんでしまった。マーク・ノップラーの「ラグピッカーズ・ドリーム」と並ぶ哀しきクリスマスソングである。
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リジナルアルバムのすぐれたレコーディングやミキシングが、それまで以上に生き返る・・・これこそ「リ」マスタリングの醍醐味であり、コンピレーションのあるべき姿である。
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