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Bルース・Bーイ・KING

 今 年度のグラミーの主要2部門を獲得したT・ボーン・バーネットのもう一つのグラミー賞「Category 66 Best Traditional Blues Album」獲得アルバム・・・ 御歳83才のブルース・ボーイ・キングこと「B.B.KING」の「ONE KIND FAVOR」を聴く。

 わ ぉっ!素晴らしいです!83才?そんなの かんけーねぇ!(古っ)

   単なるブルースアルバムを超えて素晴らしいポピュラーミュージックアルバムに仕上げるところが「T・ボーン・バーネット」のマジカルプロデュースである!

 1 曲目、いきなり響き渡るツインドラムは「ジム・ケルトナー」と「ジェイ・ベルローズ」。そこに「ネーサン・イースト」のベース、「ドクター・ジョン」のピアノ、「ニール・ラーセン」のオルガンが素晴らしいアンサンブルを繰り広げる。その強固なリズム隊と渋いブラスセクションの上に、衰えを見せないギターと、83才とはとても思えない他を圧倒するヴォリューム感たっぷり、実に味わい深い素晴らしい歌が乗っかっている。

 いやぁ、もうこの1曲目の冒頭数秒間で、完璧に秒殺、悩殺されましたわい。

 こ の曲を含めてほぼ全曲、「ブラインド・レモン・ジェファーソン」「T・ボーン・ウォーカー」、「ロニー・ジョンソン」、「ミシシッピー・シークネス」、「ハウリン・ウルフ」、「ジョン・リー・フッカー」等のオールドブルースのカバー集。だが、どれもこれも「B.B.」のオリジナルにしか聞こえない。完全に彼の音楽になりきっている。また名曲揃いなので、どブルースに聞こえず、適度に洗練されているので洒落っ気までも感じられる。

 上 記のメンバーはラストまでの12曲ほぼ不動のレコーディングメンバーで、ほかに余計なゲストミュージシャンなど一人もいないよ。彼の貫禄や名声にのっかった安直な企画アルバムでもなければリスペクトアルバムでもない、この年にしてまさに本格的な「B.B.KING」のソロアルバムなのである。

 と ころでジムとジェイのツインドラムは、まるで巨人「アトラス」と英雄「ヘラクレス」が肩を組んで重い天球を支えているかのようである。思うにKING OF BLUESのブルーススフィアの質量と比重は一人では支えきれないくらい重いのだろう。さらにその二人の巨人を援護するかのようにドクター・ジョンとネーサンが横支えしている様は、さながら阿弥陀如来を支える四天王の如し。

 音 楽家(というか表現者)には哺乳類種と恐竜種、別の言葉でいえば、人間種と巨人族がいる。どちらがどうということではないが、僕は断然恐竜種、巨人族が好き!恐竜種、巨人族というのは常に想定外、規格外の感動を与えてくれる表現者のこと。彼らは時にやすやすと閾値を超えていく勇気と伎倆の持ち主である。僕はことさらマニアックなものやマイナーなものが好みなのではない。メジャーが大好きである。芸術家なら断然ミケランジェロ、レオナルド、バッハ、ピカソ、ダリら「大芸術家」が好き!

 残 念ながらついこの間まで音楽表現者にもいたそれら恐竜の生き残りたちも、かつての恐竜がそうであったように絶滅の危機に瀕している。

 だが、まだアメリカ大陸には、それらの遺存種(レリック)のネットワークが存在しているようだが、いくらレリックたちがネットでつながっていても、その活用のしかたに精通している者が不在であれば、それはワーク(機能)しない。機能しないかぎり、つながっているだけでは、それをネットワークとは呼ばない。

 さ しづめ、「B.B.KING」はもとより「ジム・ケルトナー」や「ジェイ・ベルローズ」、「ドクタージョン」、「ネーサン・イースト」らは巨人族の遺存種(レリック)である。

 T ボーン・バーネットのプロデュースの特徴は、そのネットでつながれている巨人たちの持てる能力を最大限に引き出し、ワークさせる魔術を会得しているところにある。単にレリックたちを寄せ集めたところで、それらの人知を超える能力を余すところなく活用させる魔法がなければこれほど、ポピュラリティを獲得するアルバムにはならず、単なる老ブルースマンの企画アルバムで終っていたかも知れない。

 だ からこそこういう作業(ワーク)は賞賛に値する。いや、評価し、称賛し、顕彰する意味がある。僕がグラミー審査員の見識に敬意を払う由縁です

 と ころで、愛機「ルシール」を背中にしょってミシシッピ河(多分)を見つめるお姿(写真)は、まさしく「巨人族」の王の中の王(KING  OF  KING )たる風格を漂わせていらっしゃいますね。


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