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あまりのナイスバディにノドごっくん!涙がポタリ

 と 思わせぶりなタイトルではじまりました。ど〜も仙女で〜す!というのは、友人「仙女」さんの日記のオープニング・・・マネしてみました。(けっこう、使い勝手がよろしいですね)

 2 月のコラム「ひな祭りの贈り物」で近日発売と紹介した「Buddy & julie Miller」夫妻の新譜「Written in chalk」を入手!もう何度となく聴いてますが、いやぁ、どうにもこうにもナイスな極上バディにノドごっくんでございますよ!

 先 日の土曜日、日本でおそらく唯一(カバーでなく、全曲日本語のオリジナル!というところが唯一)のカントリーロックバンド「マーム」のリーダー「M山」君に「新宿ディスクユニオンが期末バーゲンやってますから、一緒に行きません?」と誘われたので「いいよ〜〜ん」と店で待ち合わせることに。

 1 6時半の約束だったのだが、15時半に新宿に到着・・いつも通り「タワー9F」に向かう。すぐさま「アメリカーナ、カントリー、ブルース、オルタナ・カントリー、ジャイブ、ニューオリンズ」試聴器コーナに直行。「お〜〜、新作ばっかりやん!」「どれどれ・・あら?スティーブ・アールの息子「ジャスティン・タウンズ・アール」のセカンドが出ているよ。あれ!「ウィリー・ネルソン」と「アスリープ・アット・ザ・ホィール」のコラボアルバムなんてのがあるわ(そんな組み合わせってアリ?)・・ふとその横を眺めれば“アイルランド生まれの若きロッキン・スウィングガール登場!”なんて、めちゃくちゃそそられるコピーの「イメルダ・メイ」(お初)、タンクトップのジャケがエロくなくかっこいい「アナ・エッジ」(お初)などなど・・・・次々に試聴し始めるが、これがとまらない。どれもこれも素晴らしいからだ。まったくもってこのコーナー担当のタワー社員(若いはずなのに、この渋好みの選曲はなに!・・・君は一体どんな不幸な環境で育って来たんだい?)の顔が見てみたい。それくらい僕の金銭に触れ(出た!当たり変換、ホントは「琴線」に触れ)まくるグッドチョイスにあたまクラクラ。

 ク ラクラしてる間に、ふと気がつけば、16時半をまわっている!いけね!急がねば!と言ってもここから2分ほどの距離。ディスクユニオンに着くとすでにM山君はカントリーのアナログレコードをあさっている最中であった。「おくれてすまぬ」「いえいえ、来たばかりでござる」と挨拶もそこそこに、店内のスピーカーから流れてきた素晴らしい音楽に二人の会話がピタリと止まる。思わずカウンターを見やるとW林さんがニッコリ微笑みながら「バディ&ジュリー・ミラーの新譜ですよ!」・・・二人で「うひゃぁ、カッコいい!」とユニぞる。「こ、これぼく買いです!」「わ、わいも!」と2枚お買い上げ。そのあと2時間あまり、店内でCD物色・・

 な んやかやと大人買いしてしまったが、帰りの車中ではもちろんバディ&ジュリーをかけ、ヴォリュームつまみを上げる。

 こりゃ、出だしからいきなりチョーかっこいい!しかも後半はがっつり泣ける!これまでの二人名義のアルバムの中(といっても2枚しか出てないけど)でも最高だ。

 1 曲目は、なごやかな会話の中から、手拍子とともに始まるラリー・キャンベルのフィドルに導かれるようにバディが「Take Me Back When Time Were Hard」と歌い出す。その歌にブレイディ・ブレイドのスネァとバスドラ、そして奥方のジュリーの歌声が心地よく絡み、これから広がる音楽世界への期待がいやがおうでも高まっていく。

 2 曲目、まるでジェイ・ベルローズのようなプリミティブで皮鳴りのよいドラムで幕をあける「GASOLIN AND MATCHES」、誰、このドラム?と思ってクレジットを見ると「Bryan Owings」・・・かすかに見覚えがあるが思い出せない、だがやたらカッコいいのだ。曲もタイトルそのままに燃えるゴキゲンカントリーロック。なにせタイトルが「私たち、まるでマッチとガソリンみたいね」である。燃えないわけがない!聴きながら、去年のロドニー・クロウェルの「セックス & ガソリン」を思い出した。これもカッコいい曲だったけど、曲調も曲想も似ている。愛し合う二人にガソリンが注がれるとこのように燃えるわけね。

 3 曲目 「Don’t Say Goodbye」は一転、穏やかなピアノのイントロに誘われてジュリーが歌う哀しみに満ちたバラード。「Don’t Say Goodbye」と切なく歌われるサビ部分に寄り添う裏のコーラスはパティ・グリフィン!この歌の情感はどこから来るのかわからないけど、しみじみ泣けます。

 4 曲目、こちらの聞き覚えのあるドラムは、まごうかたなき「ジェイ・ベルローズ」!そして「デニス・クロウチ」のベースに付き添われたバディの歌に続くのはなんと「ロバート・プラント」・・・これはまさに「アリソン&ロバート/レイジングサンド」のグラミー授賞式時の演奏メンバーではないか。なんでもバディはアルバムの制作途中で、「アリソン/ロバート」のワールドツアーに出かけなくてはならずやむなくレコーディングを中断、だがツアー先のコンサート会場での音合わせと衣装替えの途中でこの曲をツアーメンバーで一発録りしたのだそうだ。はぁぁぁ、この曲、もともとここに入れるつもりだったんでしょ?と言いたくなるくらい丸で違和感がない。そこにスチュアート・ダンカンのフィドル、いや、個人的にはガーフ・モリックスがラップ・スティールで参加しているのが何より嬉しい!

 バ ディとガーフ、“互いに尊敬しあい、認め合っている”(と、「ガーフが語った」と、2007年にガーフと日本で共演した安部王子がそう僕に語った。複雑な構文ですまない)の競演はこれが初めてではないだろうか。

 5 曲目は再び、ジュリーの心情風景が静かに歌われるジャズ風バラード。ブレイディのブラシとマット・ロウリングスの叙情的なピアノ、さらに中盤から聴こえるトランペットが、切なさを倍加させる。

 ブレイディのお兄さんは「ブラインアン・ブレイド」。ジョニ・ミッチェルのお抱えドラマーであり、現役ジャズドラマーの最高峰の一人である。僕はジャズ寄りのお兄ちゃんより、ロックよりの弟さんのドラムの方をより好むけど、こういうジャズ的アプローチは血のつながりを感じさせてくれますな。

 6 曲目「ONE PART,TWO PART」はバディの力強いソロ曲・・中盤以降に聞こえるレジーナ&アン マクラリー姉妹のゴスペル風コーラス(バディの2004年のグラミーのノミネートアルバム「Universal United House Of Prayer」にも参加していた)が、いきなりアメリカ大陸の緯度を南に下げ、ミシシッピ河をフルトン蒸気船で南に下ったかのようなソウルフルでサウスフルな情景を浮かび上げる。強い歌だが敬虔な気持ちに身が引き締まる。

 7 曲目も引き続きバディの泣きのバラード。「CHALK」はタイトルチューンでもある。解説によればジュリーの兄弟「ジェフ」は両親の家の芝刈りの最中に雷に打たれて亡くなったそうである。さすがにこの歌のコーラスはジュリーには辛すぎるのだろう、代わりにパティ・グリフィンがその役を見事に荷なっている。

 8 曲目はこれまたジュリーのソロ「EVERYTIME I SAY GOODBYE」。コーラスもジュリーのダビング。バディ夫妻以外では、ピアノだけ参加の静かだが、何とも言いようのない寂しさがそくそくと心に沁みる佳曲。歌詞の中にある「SILENCE IS THE LAUDEST 」がぐっと胸に迫る。

 9 曲目、今度はバディの絶品の哀しきバラード・・・先の「ONE PART,TWO PART」でゴスペル風のコーラスを聴かせてくれたマクラリー姉妹の一人「レジーナ」がソウルフルなコーラスでそっと寄り添い、聴くもののこころの扉を押し開き、ラリー・キャンベルのマンドリンが最後まで僕の琴線を掻きむしる。「HUSH!HUSH! SORROW、DON’T SAY MAY NAME」 「HUSH!HUSH! SORROW、YOU ARE TO BLAME FOR ALL OF THIS PAIN IN MY HEART 」・・・酒なしではいたたまれず、泪なしでは聴かれない。当アルバムのベストチューン。

 1 0曲目「MEMPHIS JANE」は、結婚して20年になるというおしどり夫妻バディ&ジュリーの文字通りの「鴛鴦の契り」的息ピッタリのデュエット。2曲目で僕を瞠目、刮目させた「ブライアン・オウィングス」のプリミティブな太鼓を再び堪能できる。その太鼓に載せて中盤から終盤にかけて弾かれるバディのギターソロは、実に、実に、実にカッコいい。

 ラ ス前の「JUNE」も引き続きご夫妻のデュエット!演奏も二人っきり!間奏で聴かれるバディの静謐さをたたえたアコギの音色がたまらない。

 そ してラストは、エミルー・ハリス姉さんとのデュエット曲でしめくくられる。タイトルは「THE SELFISHENESS IN MAN」・・・・なんというタイトルなんだ。ブレイディ・ブレイドの神韻縹渺たるドラムに載せて二人の声が絶妙に溶け合っていくが、中盤以降ずーっと哀しみに溢れた今現在の世界を歌い上げてきたこのアルバムだが、最後はなんとも輝かしく、未来は希望に満ちることを信じているかのように救われるエンディングになっている。

 様 々な困難があったであろうが、長年にわたって寄り添ってきた夫婦のアルバムならではだろう。二人名義のアルバムの意義はここにある。

 バ ディ・ミラーに、今さらエミルー・ハリスのバックミュージシャン等といった形容は無用であり、無益であり、何よりちっとも正しくない。

 バ ディは、もはやそのエミルー等に匹敵するグレイトアメリカーナミュージシャンの一人である。もちろんその配偶者ジュリーも、これまたしかりであることをこのアルバムが証明してくれた。


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