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デレク・トラックス

 先 週、友人と夕方6時に新宿で待ち合わせたのだが、5時半についてしまったので、タワーレコードの9Fに直行する。

 そこは、ジャズ、ブルース、カントリー、アメリカーナ、ワールドとクラシックのフロアー。

 い つも通りにアメリカーナの試聴器コーナーに向かったが、あらま、なんと珍しいことに全部ふさがっている!はやくもロバアリのグラミー受賞効果だろうか。

 ならばと、クラシックのコーナーに向かうが、途中のマガジンコーナーで、ふと足が止まる。

 そ れはギターマガジンの表紙が「デレク・トラックス」だったからだ。すっ、すごい出世ではありませんか!

 僕は、5、6年ほど前、新宿ディスクユニオン5Fで偶然にも彼のソロデビューアルバム(中古)を購入したのだが、それは「トラックス」という名前に「もしや、ブッチ・トラックスの息子だったりして、でもまさかね?」との思いからだったのだが、果たしてその「まさか」であった。だが息子ではなく甥っ子であった彼はドラマーではなくギタリスト、しかもとんでもないスライド弾きだった。

 そ の直後の2003年に彼が初来日したので、あわてて渋谷クアトロに聴きに行ったが途中で出てきてしまった。デレクはよかったけど、他のメンバーのノリになじめなかったのだ。

 それでも、めげずに彼のセカンドを購入したし、DVDも買った。しかし映像は途中で飽きてしまった。

 そ の後、彼のスライドは洛陽の紙価をどんどん高めていく。特に一昨年、エリック・クラプトンのメンバーとして来日し、すごい評判で完全に主役を食ったというのは知っているし、アマゾンからの「おすすめ商品があります」の筆頭にデレクの新譜がピカピカしっぱなしなのだが、どうにもデレクに食指が動かない日々が続いている。

 この間、デレクは「J.J.ケール&エリック・クラプトン/ザ・ロード・トゥ・エスコンディード」(写真中)でも演奏していたけれど、このアルバムで一番良かったのは、もちろんエリックでもデレクでもなく断然「J.J.ケール」だった。

 そ うこうするうち昨年、デレクの奥方「スーザン・テデスキ」のアルバム「BACK TO THE RIVER」(写真右)の方を先に購入し聴いた。とっても良いです!何たってプロデューサーが「ジョージ・ドラクリアス」なので、作りも入念で一分の隙もない、実にメジャー感タップリの鳴りとノリの良いサウンド(実際にレコード会社は「ユニバーサル」だし・・・といってもさすがにレーベルは“verve”だけど)。もちろんデレクのスライドも大活躍で、これまでのスーザンのどのアルバムをも凌駕する出来!

 だ が日記には書かなかった。僕が日記に向かうのは「何故にこの音楽にこれほど惹かれるんだろう?」と心の中に「?」が生じた時だが、このアルバムの素晴らしさは想定内の「素晴らしさ」であったので、ついに書くことはなかったのである。

 思 うに、デレクはまだ音楽を音楽としてしか演奏していないのだろう。「オールマン・ブラザーズ・バンド」の名ドラマーの甥っ子として生まれ、その名は「デレク &ドミノス」にちなみ、しかも幼少時から天才ギタリストの名はほしいままに、その優しい性格もあいまって大人たちに可愛がられのびのびすくすく育っている。しかも才能ある若き女性ミュージシャン「スーザン」との恵まれた結婚生活まですでに獲得している。幸せなんだろうな、きっと!

 だ から僕は彼の音楽に哀しみを聴き取ることができないのだろう。哀しみを宿さないスライドに何の意味があろうか?少なくとも僕にはない。

 もちろん人は幸せであったほうが良いに決まっている。何を好き好んで不幸になろうとする人がいるものか。だが回りでおこっていることは幸せなことばかりではない筈だ。9/11、イラク侵攻、それよりなによりアメリカ中南部はあの2005年のカトリーナ台風の悲劇に場所そのものである。いや、そんな大層なことでなくても僕らの回りは理不尽な困難にあふれている。和菓子(じゃなかった「我が師」)大村憲司の言葉を借りれば「誰も悪くないのに」そこら中で「悲劇はおこっている。」

 い つか彼が自ら見える範囲の中だけでなく、はるか彼方の風景の中に誰も見ていない真実を見るとき、彼はライ・クーダーのような真のスライドギタリストになるのだろう。その日を楽しみに待つことにしよう。

 と、ここまで引っ張っておいて、実は今日の主題はデレク・トラックスではなく、彼が表紙を飾っていた「ギターマガジン」の横にあった「リズム & ドラム マガジン」を生まれてはじめて購入した話だったのだが、続きは自戒(次回に)します。


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