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フィレンツェへの帰還〜スピードレーサー

 ガ イオラからの帰りは、もう一人の義理の甥っ子(結婚した甥っ子君の弟)とそのガールフレンドの4人でフィレンツェに向かうこととなった。レンタカーは12時までに返す必要がある。しかも14時半にウフィッツィ美術館の予約もしている。

 朝9時半に出発。天気もメチャメチャ良い。これなら標識もばっちり判読できる。イノシシが出たって大丈夫。ホテルでフィレンツェまでの道も詳しく教えてもらったし、しかも今度は4人である。実に心強い。距離も30キロ程度だし、不安要素はどこにもない。

 ハ イウェイより一般道の方がかえって早い、というホテル側の助言を受け入れて下の道をノンビリ走り始めた。

 いやぁ〜〜、これが大正解!見渡す限りトスカーナの素晴らしい景色が広がる。見えるのは葡萄畑とオリーブ畑のみ。しかもどこにも電線がない。電柱がない。もちろん由美かおるさんや水原弘のキンチョウ蚊取り線香の看板もない。大管公の学生服の看板もない。人工的なものが何もない。ときどき小さな街を通過するが、つましいリストランテやバールがあり、思わず入りたくなる。だが残念ながらまだ開いていない。

 レ ンタカーの旅でよかったなぁ、とつくづくそう思う。4人とも誠に幸せなドライブに大満足である。飛行機やバスや電車もいいけど、キャンティのワイン畑を縫うようにして走る車での旅はさすがにあまりないのではないだろうか。今回の旅行で一番イタリアの美しさを堪能したのは、実はこの行程だったように思う。

 キ ャンティを出発した車は順調にフィレンツェに向けてヒタ走る。すでに黄色い警告灯も消えている。実は後ろのドアが半ドアだったことがこの朝に判明したのだ。問題解消!フフフッ!

 フィレンツェまであと5キロの標識を視認!時刻はまだ11時であることを確認・・・楽勝、楽勝!ガハハハハ。

 だ が、フィレンツェ市街地近郊で、一瞬迷った分かれ道が文字通りの運命の分かれ道になった。いつのまにかシエナに向かっているではないか!またもやロスト???

 全員青ざめる。走っているうちに高速道路の入り口の前に出てしまったからだ。もちろんシエナ方面への入り口である。逆やんけ!全員白ざめる!

 「where are we?」

 路 肩に何台かの車がとまっている。車を寄せて、パニーニをほおばっているイタリア人ファミリーにフィレンツェへの道を聞く。もちろん全員口を揃えて「逆方向だ」と言っている。わかってるってば!

 とにかく高速に乗るわけには行かない!だって乗ったらあの忌まわしい「シエナ」(には何の責任もないんだけどネ)に行ってしまうのだから。

 ど うしよう!Uターン???だが、高速道路に向かう車が左から右へ向かってビュンビュン飛ばしている。我々が行くべきは、その車線の向こうにある右から左へ向かう車線なのだ。なにせイタリアは右側通行なのである。そのためにはそこを突っ切って向こうの車線に出る必要があるのだ。

 こ りゃムリですわな!・・・・しばしの沈黙の後、突然、配偶者がサイドブレーキをはずしギアを入れると、「行くどぉ〜〜〜〜っ!」と叫びながら、一瞬だけ途切れた対向車の隙間に逆行して向こうの車線に飛び込んでいく。

 チンギアーレ!アーメン!ナイフ盗んでごめんなさい!全員目をつぶって祈る!

 ま るで映画のワンシーンの様に、車はキキキーーーッツとタイヤをきしらせる。数秒後おそるおそる目をあけると車は見事にシエナを後ろにし、フィレンツェを目指す車線上にいた。

 ひゃっほー!!

 だ が、フィレンツェに向かったのはいいのだが、ガソリンを入れなければならないことに気づく。車をスタンドに入れる。もちろんセルフ。まったくやりかたがわからない。大体給油口の開け方がわからない。後ろからは「早くしろよ」のプレッシャーがかかる。とにかくようやく軽油を入れ終わるが、ここで20分以上時間を食う。

 あと30分でレンタカーのリミットだ。急げぇ!

 実 は今回の教訓。道は目的地の直前になればなるほど迷いやすい!

 とにかくフィレンツェは道が狭く、一方通行ばかりである。川の向こうになつかしのドゥオーモが見えているのに、アルノー川の向こうに行けない。川にかかる橋は有名なポンテ・ヴェッキオを含めて4本架かっている。だが、川に沿った道がこれまた一方通行と来ている。どれも渡れるが渡ると逆方向に行きそうである。

 と いうことは、町の一番西側のカッライヤ橋を渡ってから東に向かえば、たどり着けるのではないか・・・賢明な義理の甥っ子君の意見を取りいれ川のこちらであちこち走り回る。なんどもUターンを繰り返しつつも、ついにその橋を渡ってドゥオーモ側に渡ることができた。やったぁ!

 だ が、レンタカー屋の近くにいるのはわかるのだが、どこかまでは特定ができない。またもや歩いている女性に道を尋ねる。もう何万回、イタリアで道を聞いたことだろうか・・・どうやらこのまま右に行き、最初の十字路を左に行き、次の十字路を左に行き、次の十字路を左に行け、と言っているようだ。すでに12時半を過ぎている。

 あ わてて、タイヤをきしませながら、さながら往きの飛行機で見た「スピードレーサー」の如き配偶者のカミカゼ運転で、やっとこさたどり着いたのである。時に12時50分。大幅遅刻!だがそこは時間に寛大な国イタリアである。ノーチャージ!グラッツエ!

 「 人ともクタクタであった。

 ホテルに着いて一休み・・・する間もない、14時半までにはウフィッツィ美術館に行かねばならないのだ。

 4人で、ウフィッツィに向かってよろよろ歩き始める。


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