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チェロとバンジョーは相性いいのね〜CELLO MEETS BANJO AGAIN!

 前 々回のコラム「アリソンを受け継ぐもの〜折れ曲がった蒸溜器」(CROOKED STILL)はボストン出身の若手ブルーグラス進化系ミュージックだった。斬新だったのは、なんと言ってもチェロの加入だったが、これは流行なのだろうか?  というのは今日、またもや素敵な「チェロとバンジョー」との出会いがあったのだ。しかも素晴らしい歌つきである。

 彼 の名前は「BEN SOLLEE」(読み方がわからない、ベン・ソリーだろうか)とにかく、そのベン君はネットで調べるとお若い。まだ20代後半のようである。だがその、弓でも指でも、何でももって来い!的な奔放自在なチェロのテクニックと、素朴だけれど心にジンジン迫ってくる歌は、豊かな詩情に満ちていて尋常ならざるものがある。

 何より素晴らしいのはその音楽(1曲をのぞいてすべて彼の作詞・作曲)から様々な景色が浮かび上がってくることだ。ジャケットも可愛い。チェロ一丁を抱えて小船に乗り沖に向かって漕ぎだそうとする中ジャケットは、彼が自然と音楽で対話しようとしていることを物語っている。表のジャケットには写真のベンの頭上にイラストで描かれたカモメが飛んでいる・・・それらがいなくなると彼の音楽は死滅するのだろうか・・そうなったら彼はそれに抗議するのだろうか・・その時、彼はチェロを携えてどのように音楽するのだろう・・・そんな色々なことを感じさせ、考えさえることによって様々な景色を立ち上がらせる音楽を僕は好む。音楽が音楽の範疇にとどまっているかぎりそれは僕にとっての音楽ではないのだろう。

 バ イオリンもフィドルになるんだから、チェロがなにかになっても何の不思議もないが、彼の音楽を聴くと楽器がなんであれ成立する音楽の自在性こそがアメリカーナの本質なのではないかと思ってしまう。

 一 番びっくりするのは、1曲だけカバーされる曲がサム・クックの名曲「A CHANGE IS GONNA COME」であることだ。だがこれが何とも素晴らしいのである。ちゃんとブラックなフィーリングが溢れ出している。彼はよほどこの楽曲に入り込こめているのだろう。数あるこの曲のカバーの中でもこの若さにして既に名唱の仲間入りです。ウッドベースではなく、あくまでチェロだからかなぁ、この斬新さは!

 ホ ントにこれがデビューアルバム?あきれてお口はアングリしたまんまです。  実はバンジョーマスター「ベラ・フレック」がCOープロデューサーのようだ。そして数曲で素晴らしい存在感を示す女性コーラスは「アビゲイル・ウォッシュバーン」・・ベンは彼女とベラ・フレック、それにフィドルを加えて「SPARROW QUARTET」なる四重奏団を組んでいる。かれらのそのアルバムも実に渋々で素晴らしい・・・だが、今日はあまりにベンに感動したので、それはまた後日書く事にしよう。

 と  にかく、僕らは、二つの若い素晴らしい進化系ブルーグラスバンドと素晴らしい若きチェロ弾き語り君をもつことになったことだけは確かなようだ。


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