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リヴォンを聴きながら〜なんと贅沢なツインドラム!

 マ ーク・コーンの新作「JOIN THE PARADE」・・・マークの名前は、最近車中で聴くことが多いオムニバスアルバム「WAKING IN MEMPHIS」(写真中)の劈頭、アルバムタイトルになっているこの曲で初めて知った。最初は「ボビー・チャールズ」あたりの曲なのかな、と思ってジャケットを見たら本人の自作自演曲だった。いい曲だな、どんなアーティストなんだろ?そう思っていた矢先・・・

 先月新宿ディスクユニオンに行ったとき、展示されていたジャケット(写真左)を、まるで手招きされるようにフラフラと手に取り、アーティスト名を見るとその「マーク・コーン」の名前が!こういうのはご縁ものである。迷わず購入する。

 ま ずは1曲目のタイトルに我が目を疑う!だってタイトルは「LISTENING TO LEVON」〜(リヴォンを聴きながら)である!ひょっとして“リヴォン”ってあの“リヴォン・ヘルム”??そうなのだ!歌詞の内容は、ガールフレンドと車でドライブしていたら、ラジオから復活したリヴォンの歌声が聴こえてきて思わず興奮し、その後の彼女の話はまるで耳にはいらず、なにも覚えていない、という“リヴォン・ヘルム”へのオマージュと復活への喜びにあふれた歌だったのだ。そのお礼なのか、別曲だけどリヴォンの愛娘エイミー・ヘルムもコーラスでこのアルバムに参加している。

 プロデュースは、“チャーリー・セクストン”!いまや“ボブ・ディラン”バンドの看板ギター若頭である。そしてこの曲の後半で聴かれる味わい深いオルガンは、なんと“ベンモント・デンチ”・・・“トム・ペティ & ザ・ハートブレイカーズ”の鍵盤ではないか!

 ひ ゃぁ〜〜、と思っていたら2曲目、素晴らしいドラムが聴こえてくるが、なんと、仰ぎ見るしかない巨人ドラマー“ジム・ケルトナー”と魔法使いドラム”ジェイ・ベルローズ”のツインドラム!!そんな贅沢が許されるのか!

 驚きはさらに続く。4曲目、歌伴のお手本のような、控えめだけど個性を感じさせるギターフレーズはダニー・クーチマー!お〜〜シティよ、キャロル・キングよ!

 さ らに5曲目と7曲目で素晴らしいコーラスとデュエットを聴かせるのは“シェルビー・リン”!

 極めつけは8曲目、アルバムタイトルにもなっている「JOIN THE PARADE」これはなんと「ダニエル・ラノア」の直系の愛弟子「マルコム・バーン」がプロデュースしたファースト・レコーディング・セッションにチャーリー・セクストンが手を加えたものである。すんばらしい〜〜っす!

 ま ぁ、バックミュージシャンがいくら素晴らしくても肝心のマークの音楽がつまらなければ何の意味もないが、これが実に味わい深いのだ。

 『WALKING IN MEMPHIS」「ウォーキン・イン・メンフィス」(1991年の歌・・これで彼はグラミー新人賞を獲得したらしい)に比べて格段に渋くなった歌声にブラックフィーリングが乗っかっている。ブラックと言っても、ブルースではなくソウル・・・まるでエリック・クラプトンがソウルを歌えばこうなる(ありえないが)といった風情がとても新鮮なのだ。

 実 はこの人の情報はあまり持っていなかったのでネットで調べてみて三たび驚く!なんとこのコーン、2005年に強盗に頭部を拳銃で打ち抜かれて生死の境をさまよったのだそうである。銃弾はこめかみから頭部の中心にまで達したそうでまさに九死に一生(ていうか普通死ぬだろう、っていうか後遺症残るだろう、っつーかなんつーか、でしょう!)を得て生還した奇跡の人らしい。またちょうどそのころ病院でカトリーナ台風を体験し、なにかを悟ったらしいのだ。

 ふ 〜〜ん、なるほどなぁ、神様に生かされたんだね・・・わかるような気がする。”なにも恐れず”、だけど”なにかを畏れること”は決して忘れない、そんな諦念というか、不動心のようなものが、その音楽に感じられるもんね。
 ジャケットは、おそらくニューオリンズの葬式におけるジャズパレードだろう。そのパレードに加わろう!〜LET US「JOIN THE PARADE」と歌っているのもそのせいか!これまた生死の境から帰還したリヴォンに真っ先によかったね、という歌を捧げたのもそのせいなのか!

 と にかく、「DANCE BACK FROM GRAVE」(墓場から踊って帰ろ!)や、そのペア曲とも言えるタイトル曲「JOIN THE PARADE」(行列に参加しよ!)、先述のダニー・クーチのギターがジム・ケルトナーのシンプルかつ雄大なドラムにのって冴え渡る4曲目「IF I WERE AN ANGEL」(もしも僕が天使だったら)など宗教的霊感に満ちた素晴らしい楽曲の数々。

 そ れにシェルビー・リンとのデュエットが心に迫りくる7曲目「GIVING UP THE GHOST」あたりから、このアルバムは徐々に盛り上がりを見せながら「WITHOUT MOTHER OR FATHER, WITHOUT ELVIS OR JESUS, WITHOUT KING OR BEGGAR,」(父や母がいなくても、エルヴィスやイエスがいなくても、王様や乞食がいなくても)・・・それでも(命は続くのさ)〜「LIFE GOES ON」と歌われる、静謐だが、とても感動的なラスト曲にたどり着く。

 一 度は銃弾を頭に埋め込まれ、カトリーナ台風の直撃を受け止めたものでなければ決してたどり着くことはなかったであろう彼岸の渕で見た景色の数々。

 夕陽をバックに映っている中ジャケの彼(写真右)は、よく言えば「トランスポーター」の“ジェイソン・ステイサム”にも似ていて(つまりゲーハーですが、何か)なかなかカッコいい!


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