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リチャード 2世

 ・ ・・なんていうと、シェークスピアの作品のようだが、そのシェークスピアの国イギリスはロンドン出自のアーティスト「テディ・トンプソン」の新譜を聴く!

 わっ、わっわっ!す、すごいことなってきた!

 こ の弱冠32才のテディ君はブリティッシュフォークロック界の巨人の一人「リチャード・トンプソン」とこれまた素晴らしい才能の持ち主「リンダ」との子供である。

 このところ「かの地」のベテランたちの異様とも思える傑作アルバムの続出についてばかり書いてきたけど、もちろん若いミュージシャン、とりわけジュニアというか2世たちもすんごいことになっているわけなのね。

 僕 がリチャード2世、「テディ・トンプソン」の存在を知ったのは、2002年に発売になったお母さん「リンダ・トンプソン」の久々のオリジナルアルバム「ファッショナブリー・レイト」(Fashionably Late)を聴いた時である。

 その息子「テディ」や娘「カミラ」、それに元夫「リチャード」はもちろん、「ヴァン・ダイク・パークス」、「ガース・ハドソン」、ジェフとマリアの娘「ジェニ・マルダー」、美しくも繊細な声の持ち主「ケイト・ラズビー」や「イライザ・カーシー」らが参加したこのアルバムは、不安症候群を克服したリンダの復活を心から喜んでいるような繊細だけどしなやかな希望を感じさせてくれる宝石のようなアルバムだったのだが、このアルバムの半数以上の曲でリンダと共同でソングライティングし、アレンジやコーラスで大活躍していたのが息子のテディだったのだ。またこの時、独特な声のハーモニーコーラスをつけていたのが「ルーファス・ウェインライト」!言うまでもなく彼は「ロウドン・ウェインライト3世」と「ケイト・マッギャリグル」の子供・・・つまり、このリンダの復活記念アルバムには二人の「偉大な」(ジェニやマーサを入れれば4人の)ジュニア達が、まるで母や親戚の伯母さんの復帰を喜ぶかのように参加していたのである。鷹が鷹を産む・・・そんなことが「かの地」では度々あるんだね。

 そ の彼の2005年のアルバムが「セパレート・ウェイズ」(separate ways)(写真右)

   いやぁ、あんときゃぁ、驚いた!なにより声が魅力的だ。なんというのか、キラキラしている。渋声の奥に潜む、紫檀に埋め込まれた螺鈿のよう燦めきが眩しい。なぜか三大テノールの一人プラシド・ドミンゴ全盛期の声を思い出した。ルーファスの声にも共通する妖しい輝き。そのルーファスは妹マーサとともにこのアルバムにも参加している。このジュニア達はほんとに仲がいいみたい、というかコーラスを聴いているとテディとこの兄妹の声の親和性が非常に高く、ほんとの家族のようなファミリーコーラスだ。

 2 曲目「I should Get Up」3曲目「Everybody Move It」など、まるで親爺「リチャード」の作曲かと思うほど、そのコード進行やメロディラインの波形が親爺のそれに似ている。そこで絡みつくような素晴らしいギターソロを弾いているのが、誰あろう親爺「リチャード・トンプソン」その人・・これまた親子で仲がいいんだね。そのリチャードのギターにマット・チェンバレインのドラムが絡む「I wish it was over」などやはりどこかにブリティッシュフォークの遺伝子を感じさせる素晴らしいロックアルバムになっている。

 と ころで、テディの新作、例によってライナーノーツがついていない。それどころかほとんど文字情報がない。あるのは、アルバムタイトルとアーティスト名のみ!あっけらかぁ〜〜〜ん!あっ、一つだけ文章があった「for full album credit and more details please visit:www.teddythompson.com」そんだけぇ〜〜〜

 イライザ・ギルキーソンやクリスタ・データーだって一応、収録タイトルや参加ミュージシャン名くらいは掲載されていたが、それすらもなし!なぁ〜〜〜んもなし!

 そ こでテディのサイトにアクセス・・するとテディからのお詫びの文章がトップページに載っている。なんでも、ユニバーサルから示されたライナーのアイデアにまったくインスパイアされず、考えているうちに発売日が近づいてきて、やむなく肝腎なことはネットに載せることになってしまった結果こういう素っ気ないジャケットになったらしい。そのことをみんなに謝っている。まじめ(母リンダが復活アルバムを出したおり、日本でライブが予定されていたのだが、来日してすぐリンダの声がでなくなり、結局中止になった。その時、この孝行息子は、母に替わり、無料ライブをやった・・・くククク・・なんてマジメ!)な青年テディらしいね。

 だ が本作はそんなこととはおかまいなしに、文句なくカッコいい!プロデュースは”ビョーク”や”マドンナ”、それに”ルーファス”を手がける「マリウス・デ・ヴライス」!うーん、その造作に隙がなく洗練されきっている。でも隙間空間に空気と適度な湿り気がたっぷり含まれているから、その音像空間の中で十分にリラックスできる。特に3曲目「IN MY ARMS」5曲目「DON'T KNOW WHAT IWAS THINKING」などはメジャー感さえ漂わせているので、聴いていると静かな興奮を感じる。

 も ちろん、今作にもグレート親爺「リチャード」それにきっと前世では兄弟であったに違いない「ル−ファス & マーサ・ウェインライト兄妹」がそれぞれ素晴らしいギターと絶妙のコーラスワークで参加。

 ジュニア達も親爺達も全開バリバリのすっばらしいアルバムでした。ごっそうさん!


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