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「何処いく?」〜「R・O・M・A」 クォ・ヴァディス? 第3回

 だ が、とにかく彼は帰ってきた・・・
 ライブ会場は満員であった。その誰もが安部の復活を喜んでいた。小腸を移植して新たに作られた喉を振り絞って歌う安部の歌はゴボゴボして音程も下げて歌うので、よく聞き取れない。だがそれが逆にロックしていてカッコよく素晴らしかった。そしてその復活を誰より待ち望んでいたであろう村松邦男のダンエレクトロのサウンドも喜びに満ち満ちていた。これまでのどのギターより歌っていた。

 舞 台から下がる時、村松が僕に「そういえば、王子がいないときのローマには来てくんなかったね?」と言う。
 「そうなんよ、なんだか行く気がしなかったんよ。」(ごめんな)

 だが、村松は一人で(いや、もちろん他のメンバーと共に)ローマの孤塁を守っていたのだ。その証拠に、その日披露された村松の新曲(安部不在時の作品。でもタイトル忘れちゃった!ごめん)は素晴らしかった。かねてから村松には、ポップスよりむしろブルースやロックフィーリングが似合うと思っているので、こんなカッコいい曲は大歓迎である。

 そ してこの日はじめて本人が歌った安部の新曲「何処いく?」を聴いたときは、感動のあまり腰を抜かした。

院中に作られた曲である。絶望の淵で作られている筈なのに、そんな雰囲気はみじんも感じさせない。だが、その曲は静かな絶望の中でかすかに救いを求めている大傑作曲であった。安部が少年時代を過ごした尾道と神戸に思いを馳せた曲だが、詩を聞き進むうちに涙がこぼれた。

 「 生まれたおうちに帰りたい 坂道のぼり
  お寺でドングリ拾いたい
  フェリーにも乗って

  だけど行ってみたら 今はもう
  住んだ家はナイナイ
  またおいでバイバイ

  そんな街じゃ何をする?
  ぼくは一人で場違い
  そんな時にゃ何食べる?
  誰か教えてくれるかな?」

 人 は死を前にして何を考えるんだろう?

 僕は子供のころに返りたいと思ったことは一度もないが、子供の頃の想い出は多数ある。死を前にしたら思い出したくなりそうな気がするが、安部もそうだったんだろうか?

 実 は会場で、その曲がレコーディングされたCDが販売されていた(写真)。友人のSINMO君のバンド「G・A・P」(Great Artistic Planet)の新譜「RE☆BORN」である。もちろん買いました!(SINMO君!すいません!いまごろ買わせてもらいました。どの曲もホンマ素晴らしいです!)

http://www.gap-kobe.com/discography.htm

 全 曲かれらのオリジナルのはずなのだが1曲だけ、この安部の新曲がおさめられているのだ。素晴らしいボーカルはもちろんSINMO君・・だがサイドボーカルにはなんと安部の声がはいっているではないか!なんでも、最初の病院で手術前に一瞬だけ帰宅を許された時にレコーディングしたらしい。この声にはホント震えたよ。絶望の谷間に咲いた一瞬の百合のごとき清冽さにあふれている。美しいよ。ほんとに美しい声だよ。

 こ の時はまさに安部のラストレコーディングになる可能性があった。いや100%声を失う筈だったのである。それなのに静謐な澄み切った声に聞こえるのはなぜだろう。安部がそこまで達観していたとは思えない。奇跡を呼び込もうとしていたんだろうか?
 だとしたら奇跡を呼び込んでくれたSINMO君!ありがとうなぁ!素晴らしい曲を残してくれてホンマありがとう!

 チキンジョージでの「復活ライブ〜R・O・M・A VS GREAT ARTISTIC PLANET」ぜひぜひ実現しておくんなまし!児島社長によろしくお伝えください!

 「 クォ・ヴァディス?」(主よ、何処へ行かれるのですか?)

 と問いかけるペテロにイエスは

 「私がこれから行くところにお前は行けない。
  だがあとからくることになる」

 と答える。

 「 僕はどこからきてどこに行くのだろう?」

 これは我が師、故「大村憲司」の生涯のテーマでもあった。

 「師よ!何処へ行かれるですか?」

 「僕が行くところにお前は行けない。
  だがあとからくることになる」

 「了解っす!」


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