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二匹の猫力(キャット・パワーとノラ・ジョーンズ)

 先 日テレビを見ていたら、その日(3月22日)公開予定のノラ・ジョーンズ初主演映画「マイ・ブルーベリー・ナイツ」のCFが流れていて驚いた。だって、監督がウォン・カーワィで、出演者もジュード・ロウ、ナタリー・ポートマンらアカデミーノミニーズ勢揃い映画だからテレビで宣伝するのは当然でしょ?何も驚くことないじゃん、エートスさん!う〜ん、確かに・・・でもね、バックで流れている曲がノラが歌っている書き下ろし主題歌「ザ・ストーリー」ではなく、キャット・パワーの2005年曲「ザ・グレイテスト」なんだよ!そりゃぁ、ビックリするでしょ!

 映 画館で見た予告編では、二人の曲、どちらも使われていたけど、テレビで流れているのは、キャット・パワーの曲が使われている15秒ヴァージョンの方なのだ!でも実はこれ、僕はナットクなのである。

 サントラはすでに2月に購入し、何度も聴いていた。ライ・クーダーのサントラプロデュースは相変わらず素晴らしい。

 書 き下ろしの歌はノラ坊の「ザ・ストーリー」だけでそれ以外は、ライが選んだ既存の歌、それとインストは、ライ組(ライのギターとライの息子ヨハキム・クーダーのドラム、それにエンジニアでもあり収録曲の一つ「 バスライド」(ライの雄大なスライドが、ピアノとオケのはざまに効果的に浮かび上がるカッコいい曲)の作曲者でもあるマーティン・プレードラーのチーム)で構成されている。(ヨアキムが加わると音響系のサウンドになってカッチョいいよ!)

 ラ イがこの映画のために選曲した「既存の歌」というのは、

 オーティス・レディング 「トライ・ア・リトル・キス」
 ルース・ブラウン 「ルッキング・バック」
 メイヴィス・スティプルス 「アイズ・オン・ザ・プライズ」
 エイモス・リー 「スキッピング・ストーン」
 カサンドラ・ウィルソン 「ハーヴェスト・ムーン」

   オー!ソウルフル!

 そ れにヨアキム・クーダーがリーダーのグループ“ハロー・ストレンジャー“ 「デヴィルズ・ハイウェイ」(これがまた、その女性ボーカルの声が、あまりに淡く、朧げで、儚さイッパイの美曲なのだ!)
 そしてキャット・パワーが2曲「リヴィング・プルーフ」と「ザ・グレ ーテスト」

 オー!パワフル!

 そ れにインストだけど、続木力のハーモニカによる「夢二のテーマ」という曲(初めて知ったけど、まるでパリのチューブ(地下鉄)の廃駅で聴く人もいないのに暗闇に向かって誰かが吹いているような、何とも言えない寂寥感がソクソクと胸に沁み入ります)が印象的に使われている。

 オー!グレイトフル!

 実 は既存の曲の中でCDを持っていないミュージシャンが二人いた。それはノラ坊とカサンドラ・ウィルソン。
 それぞれ購入にいたらなかった理由はわかからない・・・その歌声は何度も耳にしているのに、とにかくご縁がなかったとしか申し上げられない。
 だが、今回、カサンドラの歌う「ハーヴェスト・ムーン」(もちろんニール・ヤングの、あの名曲のカバーですよ)を聴いて、ついこの曲が収録されているアルバム『New Moon Daughter」をアマゾンでゲットした。それくらいグッときちゃったのでる・・・だが、カサンドラ嬢はやはり、アルバムタイトルが何ともカッコいいこの一枚で充分かな・・

 そ してやはりノラちゃんには、今回も食指がうごかなかった。ジャック・ジョンソンにも言えるんだけど、どうもこのお二人の歌はこれまでのところ僕のこころのドアの近くまでは来てくれるんだけど、ノックしてはくれないのである。僕は僕のこころをノックしてくれた人には「どうぞ、どうぞおはいりください・・でもまたなんで私なんぞを、お尋ねていただいたのでしょう?」とその理由を探しまわってしまうのであるが、そうでないときは深く詮索しないことにしている(って当たり前だよね・・尋ねてこない人を掴まえて「なぜオレっちにこないんだよ!」と訊くことはないもんね)。ま、いつかご縁ができるであろう。特にノラ坊は、この映画の出演経験を経て、何か大きなものを掴むかも知れないから今後に大いに期待しよう!

 と ころで、あらためてキャット・パワーの歌のパワーを再認識する。その内省的な歌声は、ドラマチックな悲劇性をたたえているのに、どこか大きな母性愛を感じさせる。フォークやカントリーなどのルーツミュージックを基調としているけれど、パンクの洗礼を受けているので、アヴァンギャルドでフレッシュな、文字通りの「パワー」感に圧倒される。

 ア トランタ生まれの彼女は幼い時に両親が離婚、流浪のピアニストの父の影響を受けうつつ、パンクの洗礼を受ける、その後彼女は妊娠、流産、同時期に多くの友人をエイズやドラッグで亡くし、自身も自殺未遂など、けっこう波瀾の前半生を送っている。「ソニック・ユース」の”スティーブ・シェリー”に見いだされた彼女の大ファンと公言するのアーティストには、「パール・ジャム」の”エディ・ヴェッダー”に「フー・ファイターズ」の”ディブ・グローブ”らがいる。ナットクの「オルタナクィーン」ぶり!

 そ んな彼女はインタビューでこう語っている。

「・・・私がずっと、歌っている内容は同じ。言葉にもできない、“魂の中の低い響きのようなもの”を音楽で表現したい。以前の私は鬱屈していたから、歌の視点が恐れを知らないと同時にすごく恐れているような視点だったと思う。今は失うものは何もないと感じているし、視点は違うものになっていると思う・・・」

 な るほどなぁ・・・ノラちゃんにはない視点だよなぁ・・・どちらが、いい、わるい、ではない、グッと来ちゃう度合いの違い、というか僕の受容体(レセプター)にぴったりはまるかどうかの違い。

 この数奇な人生をおくっている本名ショーン・マーシャルの歌は、僕の受容体にピッタリはまるので、そのキャット・パワーにやられてしまうのだ。

 最 後にミス・ジョーンズにはお手紙を書いておこう。

前略
 その、溢れかえる才能、持て余す能力、受け継がれた豊かな素質に加えて、チャーミングな容姿までお持ちのノラ様・・・あなたの本質は、充分にグルーミングされた柔らかで優しい手触りの飼いネコのそれではなく、実はその名前の通り、”野良”ネコパワーにあり!と思うのですが、如何でしょう?

 どうかいつの日か、ネコをかぶるのをやめて、その本性剥き出しの「野良猫」、いや野性剥き出しの「山猫」パワーを発揮してくださいませね。

                                 草々

 追 伸

 上記写真は、我が家にいる3匹のネコのうちの二匹・・・ギン(右)とルーシー(左)。

 ルーシーは元野良、ギンは御歳90才の由緒正しき血統ネコ。どっちがキャットでどっちがノラ坊かなぁ。ま、どっちでもいいんだけど。


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