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メキシッカンロックゥ〜ゴーゥゴゥ!ゴゥゴゥ!



 ・ ・・と昭和40年代前半に「恋のメキシカンロック」を歌ったのは「橋幸夫」さんである。橋さんにはリズム歌謡という迷ジャンルがあるが、まことに日本の歌謡曲はなんでも飲み込んで消化するギャル曽根チャンの胃袋的な特異なカテゴリーであり、興味はつきない。
 で 、今日は、メキシカンロックといえば、橋幸夫!・・ではなく、「LOS LOBOS」である。
 8 0年代はT・ボーン・バーネット、90年代は、ミッチェル・フルーム & チャド・ブレイクコンビによるプロデュースにより多くの傑作アルバムを発表してきたテックスメックスの雄、ロス・ロボスの最新作「THE TOWN AND THE CITY」(写真左)を聴く。
 ほ にゃらぁ〜、なんと気持ちいい音楽であることか!これは最近のかれらのアルバムの中でも、特筆すべき名作となった。
 前 作「ザ・ライド(THE RIDE)」(写真真ん中)は、エルビス・コステロ、リチャード・トンプソン、ボビー・ウーマックやらなにやら豪華ゲストを迎えた例えようもなく楽しい(って例えてるじゃん)ゴージャスアルバムであったが、企画CDであったので、今回のアルバムは、2002年の「グッド・モーニング・アズトラン」(約10年間連れ添ったフルーム・チャドコンビから離れて制作されたゴンブトのロックアルバム)以来5年ぶりのオリジナルである。
 結 成してもう30年以上になるメンバー全員がチカーノ(メキシコ系アメリカン)という彼らの音楽は、アメリカ南部の音楽を出発点に、西へ行ってテキサスの空気を思いきり吸い込み、リオ・グランデ川を渡ってさらに西進してメキシコの土壌をふんだんに混ぜ込み、そのまま西北へ移動し、その名もスペイン語で「聖天使」ロス・アンジェルスでギューっとまとめて長時間発酵させたかのような、独特の香りが特徴だ。様々な地の音楽の要素が渾然と混じり合っているが、少しも泥臭くなく、むしろ上品でさえある。だがミッチェル・フルームと組むと、ときとしてアクが抜け過ぎて僕には物足りなくなることがあるけれど、今回のプロデュースは「LOS LOBOS」本人達名義である。ただし、ミックスのみチャド・ブレイク参加。この取り合わせは好きだなぁ。洗練されてはいるけど、全然堅苦しくなく、適度に残るお行儀の悪さがキュートだし、エンジニアに徹したチャドのミックスには音の芯に暖かみが感じられる。おそらくいつものように、メンバーがふらーっと集まり、せいのっ!でプレイした音楽をチャドが加工したのだろうが、まるで周到に準備がほどこされ、お金も十分かけられているかのような(実際、そうなのかも知れない)深みのある豊饒な輝きに満ちたメジャー感が横溢する贅沢なアルバムとなっている。
 人 口的にはメジャーであっても、アメリカ社会にあってはマイナーであるヒスパニックの悲哀を生まれ持っている「ロス・ロボス」の音楽は、いつも豪快でありながら、深い哀しみがにじみ、暗闇を潜ませている。だが彼らは、音楽的に一度も立ち止まったり、一つのところに留まろうとはしなかった。常に変わらぬメキシコ音楽への愛情を基調にしながらも、30年以上にわたっていつも実験的で意欲的に新しい音楽に取り組んできた。彼らの音楽から政治的メッセージを直接聞き取ることはできないけれど、音楽に取り組む姿勢そのものが、アメリカ社会で生きるマイノリティの「誇り」を先取りしているように思える。
 「 LOS LOBOS」とはスペイン語で「狼たち」という意味である(だからシートン先生は「狼王」に「ロボ(LOBOS)」という名をあたえたのである(たぶん)。
 人 間たちが我が物顔にしゃしゃりでてくるまで、森林の王であり神であった「狼」に自らをなぞらえた彼らの実質的なデビューアルバムのタイトルで「HOW WILL THE WOLF SURVIVE ?」(いかにしてオオカミは生存できようか?写真右)と問うた彼らは、革新的に前衛的に音楽に取り組むことによって、その答えを自ら見いだした。そうすることによってのみ、誇り高きチカーノ出身のライブバンドとして、侵略者アングロサクソン中心のアメリカで、「我らこそ狼なり」という名を掲げて「生存」できえているのである。

 狼オジサン達!とっても、かっこえーとす!

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