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リヴォン・ヘルムさん!死なないで!



 チ ャン隊長が、渋谷のタワーレコード5Fでインストアライブを行なった。5Fというところがミソである。そこは僕がよく行く、アメリカーナ、ブルース、カントリーのフロアである。当然のようにライブの開始を待っているあいだ、試聴機を聴きまくる。その中の1枚がこれ。一聴して、マジかよ?これって、まんま、カレン・ダールトンやん!しかも、このタメドラ(タメの効いたドラムの意味ね)は誰?も、もしや・・ひょっとして、いやきっと〜〜〜ぎゃ〜〜〜やっぱりリヴォン・ヘルムやぁ〜〜〜「これはロック界の宝石箱やぁ!カワセミやぁ!アカショウビンやぁ!」とヘッドフォンをしながら彦麻呂状態になって叫んでしまった。
 家 に帰ってあらためて聴きながら、ジャケットを見る。なんとリヴォンの愛娘「エイミィ・ヘルム」も参加している。彼女はリヴォンと今はドナルド・フェイゲンの奥さんであるリビー・タイタスを母にもつ、とっても若くて渋い「オラベル」(右側のジャケット・・・T・ボーン・バーネットがプロデュースした、デビューアルバムにしてすでに名作であるこのアルバムでも、リヴォン・ヘルムが2曲だけ「親ばかドラム」を叩いている。)というバンドのメンバーでもあるので、良く知っている。なんと今回はドラムとハーモニーで参加。オラベルではドラムは他にいるのでドラムを叩くとは知らなかった!でも1曲ごとのクレジットでないので、どの曲で叩いているのかは、僕にはわからない。どれもリヴォンが叩いているように聞こえる。
 残 念なのは、リヴォンはドラムだけの参加で、ボーカル参加は1曲もない。実はさっき知ったのだが、リヴォンは喉頭ガンらしい。でもだいぶよくなって(そりゃ、そうだろう!こんだけドラムをタメられるのである!)きているらしい。1940年生まれだから、今年67才か、死ぬにはまだ早い!長生きしてくれよ!
 な にせリチャード・マニュエル、リック・ダンコ亡きあと、ただ一人生き残っている「ザ・バンド」のボーカルである。ロビー・ロバートソンもガース・ハドソンもまだ活躍してくれているのは嬉しいが、「ザ・バンド」のボーカルは、あくまでもこの三人なのだから。これでリヴォンが神に召されたら、ハナ肇、植木等を亡くし、谷啓(ご病気だそうである)までもがいない「クレイジーキャッツ」である。植木等が亡くなったとき、内田樹さんは「昭和は遠くなりにけり」という名言をのこしたが、これでリヴォンが亡くなったら「ロックは遠くなりにけり」なのだろうか?ま、日本と違ってアメリカは次から次に、次代のアーティストが出てくるからそんな心配はないか。
 そ して肝腎のこの「マーサ・スキャンラン」であるが、実にウッドストッキーな音楽性が僕のこころに沁みてくる。なにせアルバムクレジットには「RECORDED AT LEVON HELM STUDIO WOOSTOCK NY.」とある。くぅ〜〜〜、ウッドストック系好きなら死んで喜ぶクレジットじゃないか!それに彼女の声がまた、カレン・ダールトンにそっくりである。ボブ・ディランをして「僕の生涯で最も好きな女性ボーカル」と言わしめ、フレッド・ニールもその才能を絶賛してやまなかったにも拘わらず、わずか2枚の傑作アルバムを遺して忽然と音楽シーンから姿を消した、幻のフォーク歌手にして12弦バンジョーの名手である彼女の声は、その後の彼女の人生を予感させるように孤独で深い哀しみを湛えている。「アシッドフォーク界のビリー・ホリディ」と言われたそれにくらべればマーサの方が、ずぶとく明るいが、それでもオールドタイミーな独特の風合いにアパラチアンの雰囲気が相まって、まるでカレン・ダールトンが、ザ・バンドにサポートされて甦ってきたのかいなと、なんとも嬉しい錯覚をおこさせる新鮮さである。何たってアルバムタイトルが「THE WEST WAS BURNING」(西部は燃えていた)だもんな。まいった!
 遠 く異国の地よりリヴォンの健康の回復を強くお祈り申し上げる。

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