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23日、下北沢「ラ・カーニャ」に中村まりさんのワンマンライブを聴きに行く。



 今 月二度目のラ・カーニャ・・前回はエイモス・ギャレットのライブであるが、このときのゲストボーカルが中村さんである。
 今 回は時間ギリギリで入店したため、舞台に向かって左側の端っこの柱のカゲ、見事に視界が遮られる。前回のエイモスのライブのときの、前から三列目とはえらい違い。演奏が始まっても、見えるのは、わずかに中村さんの右ヒジだけである。当然ほとんどヒジは動かない。ま、しょうがないか・・・と思っていたところ、ふと壁の左側に飾ってある額縁の絵を見たところ、なんとばバッチリ彼女の姿がガラスに鬱離婚(映り込ん)でいるではないか!結局最期までずーっと前を見ず、左の壁を見続けることとなる。
 演 奏は、それまでカラオケボックスで調子を整えていたとかで10分押しで始まった。セカンドアルバム「Seeds To Grow」(写真真ん中)収録の「Speak Out Loud」で幕開け。その後2曲の新曲(たぶん)が演奏された後で彼女は「次はカバーです。これからは『カバーです』と言わない限り私のオリジナルです。」とよくわからないことを言う。「・・・というのは私の歌は英語詞なんで、いつもあとで、あれは誰のカバーですかと聴かれるので・・・」と、「はぁ、なるほど、そういうことね」とよくわかることを言う。
 カ バーされたのは、ロン・セクススミスの「Up The Road」・・・・彼女の歌を最初に聴いたのは、4年ほど前の、吉祥寺「曼荼羅」である。当時マネジメントしていた男性ミュージシャンのライブでの対バンだった。偶然聴いて驚いた。まるでジョニ・ミッチェルのような歌とギターである。オリジナル中心だったが、このときもディランとロン・セクススミスをカバーしていた。ディランのカバーでさえあまりいないのにロンまでカバーする女性ミュージシャンがいるんだ!この日本に!あまりのことに気が動転してアンケート(今回と同じく、彼女の素晴らしいイラストレーションが書かれていた。CDのジャケットワークもともに彼女の描く風景画である)の裏まで、絶賛のコメントを書きまくってしまった。(その後2、3回メールでやり取りしたけど、彼女も、僕と同じく、ロンの3枚目の「Blue Boy」が一番好きだ、と聞いてなんだか嬉しかった)
 続 いてミシシッピ・ジョン・ハートの代表的ナンバー「Candy Man」のカバーである。さきのエイモスのライブのオープニングアクトでも彼のカバーを歌っていたが、まだお若くていらっしゃるのに、どんな人に言えない深い事情がおありなすってこんなにも渋くて地味なブルースマンの音楽を好きなんでございましょうや。ほんとに毎度、毎度「どーして?どーしてこの選曲なの!おせーて!ねっ!おねっっっがいだから!」とツッコミを入れたくなるゲキシブ選曲である。また彼女のオリジナルは、ブルースコードで弾かれるわけではないのに、音楽の奥底からブルースが聞こえてくる。どうやら彼女はいつも何かに心を痛めている人のようだが、何に心を痛めているのか、なぜそうなのかは、わからない。とにかくそんなミステリアスなところが魅力だな、FOR ME!
 こ こでゲストの安宅こうじさんが参加して、すごく高そうなナショナル・ギターのスライドで、すでにして名曲の殿堂入りを果たしている「Peace Of Mind」を演奏する。それまでの一筆書きの水墨画のような世界から、奥ゆきのある水彩画の世界に変化する。続いて安宅さんはバンジョーに持ち替える。目を瞑っていると、まるで、ここはアメリカ南部の片田舎の古い木造建物の演奏会場のようだ。インターネット社会の匿名性についての歌だという「Invisibleman Blues」(透明人間ブルース)、まぁなにごとも分相応であることが自分にとってはネガティブではなくポジティブなんだという歌「Good Enough For Me」で第1部終了。素晴らしいカバーと今日初めて聞くオリジナルに満足する。
 第 二部では、ボニー・レイットの名曲「Give it up or Let Me Go」のカバー!(この曲のオリジナルではボニー姉御のナショナル・レゾネーターギターの豪快なスライドにエイモス・ギャレットがなんとトロンボーンで参加している。ここでもまりさんとエイモスを繋ぐ線が見えてくる。そういえば、エイモスさん、この前のライブでは「口」トロンボーンもやってたっけ。彼のギターに歌ごころが横溢するのは、このトロンボーン吹きでもあることと無関係ではあるまい。)にポール・マッカートニーのバラード(Junk)のカバーを交えつつ、名曲「Our Blue」で終了。
 ア ンコールは1曲だけかと思っていたら大好きな「Sleep Well」(この曲の作詞・作曲者が日本人であると信じられる人がどれほどいようか?この曲を聴けば、アメリカ人であっても、ご先祖様たちから代々歌いつがれてきた子守歌だと思うに違いない。まさに「オリジナルですけど、それが何か問題でも?」と言いたくなるような中村まりの世界である)まで演奏されたので、「2,500円ポッキリで愚息は大満足」(日刊ゲンダイの風俗店評のようだな、行ったことないけど)したのである。

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