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ルシンダ・ウィリアムス姉御の新作「ウェスト」に落雷す!

West / Lucinda Williams
 ・ ・・違った!落涙す!

 前回の傑作アルバム「WORLD WITHOUT TEARS」以来4年ぶりとなる姉御のオリジナルアルバムがついに発売された・・・・お?、待ちかねたぜぃ。

 もちろんこの間にも素晴らしいライブアルバムと90年代の掉尾を飾る大名作「CAR WHEELS ON A GRAVEL ROAD」のデラックスエディション2枚組(なんとガーフ・モリックス・プロデュースのアウトテイクがおさめられている!)なんて嬉しい贈り物もあったが、ついに、ついにオリジナルだ。ワーイ!
 し かもそれが、なんと、なんと、伝説のプロデューサー「ハル・ウィルナー」との共同プロデュースと来たもんだ。封を切る手が震えるってもんだ。

 で、どんなもんだ?っていうと、これがサイコーだ!酒がすすむ、すすむ!石川進(知らない人は読み飛ばしてね)最後まで聴き終わるまでに、軽くバーボンのボトル一本飲み干すってもんである。このたとえをもってすれば、このアルバムがどれほどの傑作CDであるか、どなたにも瞬時にご理解戴けるであろう。
 に しても、「CAR WHEELS ON A GRAVEL ROAD」(1998)、「ESSENCE」(2001)、「WORLD WITHOUT TEARS」(2003)と僅か6年の間に立て続けに3作の傑作アルバムを発表し、「こんなにスン?ゴイのをつぎつぎ作っちゃって、このあとこのヒト一体どんな作品を作ろうってわけ?」と余計な心配をしていたが、この人には「これ以上はない」ってもんがないんだな。どこまでも至高の高みに昇って行ける希代の音楽家である。しかも御年「53才」のオバサマであるが、開いた車のドアをにらみつけるジャケット写真からして実にカッコいい!「いよっ!姉御!いつまでも長生きしてや!」と声をかけてしまう(返事はまだないけど)
 実 は僕は勝手に自分の好きな音楽家を番付して楽しんでいる。ほんでもってこの10年間、マイ番付で東の正横綱をはっているのが、ルシンダ・ウィリアムスなのである(ちなみに西の正横綱は「ギリアン・ウェルチ」)。朝青龍より強いのだ!・・と、こう言えば、どれほど強いかおわかりいただけるであろう。グラミー賞を三回(しかも「カントリー」「フォーク」「ロック」と異なる3部門を制覇)しているのはダテではないないのである。得意の決まり手は「仏壇返し」である・・と、こう書けばどれほど強いかはさらにおわかりになるであろう。
 レ イドバックしているのに「思わず居住まいを正したくなる」そんなアルバムである。僕は聴き始めこそカウチに横たわっていたのだが、バーボンを飲み乾すころにはソファーに正座してコウベ(ウンコではない)をたれて聴き入っていた。そして最後は落雷!じゃなかった落涙!
 「 曲を書く時の題材は限られている」「愛、セックス、死、喪失、そして救済。すべての歌と詩は、このうちのどれかを題材にしている」と断言するルシンダ!「く〜〜〜っ!」僕は思わず「そうだ!その通り!それ以外になにをネタに音楽しようってわけさ?ーーったく!」とヒザを叩く(ペチペチ・・・ヒザたたきの音ネ)・・・それにさ、何より最後に「救済」ってのがいいよねぇ。それこそが歌であり音楽ってもんだもんね!ワンダフォー!
 ま ことにシンプルな詩・・言葉も少ないし、単純な語彙の繰り返しが多いけど、僕のココロのオクヒダにソクソクと「愛と死と喪失そして救済」が沁みいってくる。バーボンで焼いたかのような(事実彼女はライブのときは必ずバーボンを飲みながら歌うんだそうです)しゃがれた声がグリグリと僕の肺腑をえぐって、えぐって、えぐりぬいていくぅ?。グァァァァァ何と気持ちいい〜〜〜。どMかオレは!

後ろのメンバーもレイドバックしながらも全員が居住まいを正しながら素晴らしい演奏を奏でる。
 ド ラムのジム・ケルトナー(きゃ?まだまだ死なないでね、ゼッタイ!俺が死ぬまでは!)が渾身のバスドラを踏み、献身のスティックがスネアーを打つ。ボブ・ディランバンドのバンマスのトニー・ガー二アがディランバンドのときより控えめなベースをキッチリ鳴らす。そしてギターには、ルシンダの片腕(といっても腕は2本ある、あたりまえか!)ダグ・ペティボーンに加えて何と、ビル・フリゼールだぜぃ!これぞハル・ウィルナーマジックか?まったくジャズを感じさせない完ぺきなサポートである。とくに9分を超えるラップ(えっ?ルシンダがラップ?ウソやん!ご安心あれ。「よーよー」繰り返すだけのヘッポコラップではござらん・・これをラップと言うのなら、おらぁラップ好きになってもいいずらよ、そういう気持ちにさせる名曲である)「WRAP MY HEAD AROUND THAT」では全編にわたってビルの鬼気迫る超絶ギターを聴くことができる。さらにはジェイホークスでマーク・オルソンとツインボーカルをとっていたゲイリー・ルーリスがバックコーラスで参加している。
 そ して、全体を通してハルのサウンドアレンジが、女性として成熟し、人間として進化し、深化し続けるミュージシャン「ルシンダ・ウィリアムス」の真価を2001年の「ESSENCE」にも似たダニエル・ラノア的浮游感の中にクッキリと浮かび上がらせる鉄板の傑作アルバムである。

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