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語源から読み解く「アマチュア」と「プロフェッショナル」/ぶらきぼう
 プロとアマ・・よく耳にする言葉です。でもその違いって?そもそも定義って何でしょうね。
 ひとによって様々な解釈が可能でしょうから、ここでは、もともとの意味を語源から探ってみます。
 アマチュア=「amateure」この語幹「ama」はラテン語で「amare」=「愛する」という意味の動詞の語幹から採られています。このラテン語の「ama」 からは「愛」に関する沢山の単語が生まれています。
 アマン・・といえば、愛人。フジテレビでよく見る「アモーレの鐘が10時をお知らせします」なんていうときは「愛の鐘」のこと。アミィといえばフランス語で友達や恋人など特別に親しい人のこと、映画などでおなじみの「アディオス アミーゴ」といえば「さらば 友よ」・・そういえば、60年代にアラン・ドロンとチャールズ・ブロンソンが共演した、ちょっとお洒落でクールなクライムムービー「さらば友よ」の原題は「アデュー アミィ」だった・・知らないよねぇ。
 また敵を意味する「エネミー」「enemy」だって「en=not」+[amy]=「愛さない人」、だから「敵」なのです。
 ま、とにかく[ama]は愛に満ちあふれているわけです。だから日本語では「愛好家」とか「好事家」とか訳されます。意味は「道楽で技芸を愛する人」
 では「プロフェッショナル」=「professional」 これは「pro・・」と「・・fess」にわけることが可能です。つまり「pro」は「前に」という意味の接頭語です。プロローグ(序章)、プログレス(前に進む=進歩)、プロデュース(前に引き出す=才能を前に引き出す)、プロダクツ(前に引き出されたもの=製品)、プロペラ(前に駆り立てるもの)プロモート(前にムーブさせる・・昇進する、奨励する)、プロポーズ(前に置く・・提案する、結婚を提案するのでプロポーズ)、プロテクト(前を覆う=保護する)、プロバイド(前をvide(o)=ビデオ=ラテン語で「見る」、つまり「前」もって「見る」・・準備する)などなど、前を意味する「pro」を接頭辞に持つ単語はたくさんあります。
 では「・・fess」はと言うと、これは「言う」という意味のラテン語「fate」の変化形で、たとえば、「confess」といえば、「con=一緒に」「fess=言う」=告白する、という意味です。他にもこの語幹「fat」をもつ単語も多い。
 絵画や音楽のタイトルにもある「ファム ファタル」・・よく「運命の女」と訳されてます。「ファム」が「フェミニン」や「フェミニズム」の「フェミ」=女であることは容易に察しがつきますが「ファタル」=「言う」がなぜ「運命の・・」になるかといえば、「神」が「fate」する=言う、つまり神が予言した=「運命の」となるわけですね。意外かもしれませんが幼児を意味する「infant」だって「in=not」+「fate」つまり「言わない」=「しゃべれない」・・だから赤ちゃんという意味なんです。
 ではこの二つ、「プロ」(前)に「フェス」(言う)とは何を意味するのか?
 「前に言う」とは何を、前に言うんでしょうね?
 これは、みんなを「前」にして、「私は、***と申すものです。これから、みなさんに素晴らしい芸をお見せします。もしお気に召されたら、どうか、この帽子にお金をお入れください。お気に召さなかったらお代は頂きません!では、始めましょう!」
 と「前」に言ってから、素晴らしい芸を見せる人のことだったんですね。
 みんなの「前」で、「前」もって、「私は素晴らしい技量の持ち主である」と「言う」人のこと・・これが「プロフェッショナル」のもともとの意味なのです。
 こういう場面を想像してみてください。

 時代は中世、場所はヨーロッパ大陸のどこか・・あなたは諸国を旅して歩く吟遊詩人です。 ある国にさしかかりました。すると国中の村人が悲しい顔をしています。あなたはたずねます。
 「一体、何がそんなに悲しいのですか?」
 村人は答えます。
 「王様が愛してやまなかい王女様が重いご病気なのです。それで国中が悲しんでいるのです。」
 それをきいたあなたは王様がいるお城に行きます。そして哀しみに沈む王様の前で言います。
 「王様!私は***と申すヨーロッパ一の吟遊詩人です。もしよろしければ、私が歌を歌い、王様のつらい気持ちをお慰めしましょう」
 「なんと?ヨーロッパ一の詩人だと?そうか、そこまで言い切るなら、歌ってみよ!もし、その方の歌がこの私を慰めてくれたなら、その方が望むものをなんでも取らせよう。だが、もし、慰めることができなかったら、その方の首を撥ねるぞ!それでも良いか?」
 こういうシーンは中世においておそらく沢山あったのでしょうね。この詩人がその後どうなったのか?はわかりません。
 詩人が言ったとおり王様を慰めて沢山のご褒美を頂いたかもしれませんね。でもその逆だったら・・王様を慰めることができなかったら、その詩人は首をチョン切られています。
 つまり、「プロフェッショナル」とは、「名誉」と「死」の「はざま」で文字通り「命がけ」で生きる技芸の人たちのことなのです。
 それもこれも、プロフェスするがゆえ・・前もって言うが為に・・・です。
 では続けて次ぎのシーンを想像してください。

 同じ中世の、場所は、その後の先ほどの村です。
 王女様の容態が回復して王様は大変元気に明るくなられました。村人はお祝いをしたくなりました。村々では、総出でお祭りの準備です。ブドウをつぶして新酒をつくりました。貴重な豚も一匹丸ごと料理しました。そして宴会が始まりました。みんな、思い思いの楽器を持ち込んで踊ります。「王様、バンザイ、王女様バンザイ」と・・決して上手くはない楽器弾きと歌うたい・・そして踊り・・でもみんな笑いこけています。そしてみんな酔っています。
 そこへ、なんと王様がやってきました。そしてあまりの楽しさに王様自らが踊りの輪の中にいるではありませんか?村人はビックリ、そして恐れました。自分たちの歌や踊りがあまりにもひどくて王様が怒らないか?と<心配してのことでした。でも王様は笑いながら言いました。>
 「どんなに下手でも、なに、かまうものか!楽しければそれでいいではないか!愛があれば!・・」
 「アマチュア」と「プロフェッショナル」の語源を巡る旅はここで終わります。
 愛があればそれですべてオーケーの「アマチュア」
 それに引き替え、「大いなる名誉」の隣にいつも「死」を伴っているもの・・
それが「プロフェッショナル」・・・・・僕にはそう定義つけられるのです。
 でもプロとアマに優劣はありません。違いがあるだけ。
どちらを選んだとしても、ともに「音楽と共に生きる」ことには変わりはありません。

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