レコーディング3日目。最終日。 残っているのは「パレード」「指切り」のコーラス。「SHOW」のギターソロ。その他こ まかいこと。そしてミックスダウン。 まずは「SHOW」の間奏から始める。 前回の屈辱を晴らすために村松はさらなる「ントイタ・トイタン」の練習漬けになって いた。そしてこの最終日。リベンジはなるのか。 村松は無言だ。表情も厳しい。 「じゃあ、テストで〜す」 間奏前のアカペラ部分から再生が始まる。 ♪ドゥワァ〜〜 ・・・よし、いまだ。 前にも書いたがここでさらに詳しくフレーズを説明しよう。 まずは2小節のフレーズを16分音符32こに分解する。 で、白丸が演奏する音符、黒丸が休符。 ●○○○|○○○●|○○○○|○○●○|○○○○|○●○○|○○○○|●○○○ これに実際のフレーズを当てはめてみる。 ●トイタ|トイタ●|トイタト|イタ●ト|イタトイ|タ●トイ|タトイタ|●トイタ この譜割りで3弦の9フレット、11フレット、2弦の10フレットの順に弾く。3弦 の9フレ、11フレ間はスラー。 そんなに難しくなさそう、と、そう思った多少は腕に自信のある貴方。じっさいにやっ てごらんなさい。恐ろしく難しいから。もし1時間くらいの練習ですらすら弾ける人がい たら、お目にかかりたい。そして秘けつを教えてもらうことにする。 本題に戻る。 ・・・で、できたよ!・・・でも、テストだ・・・ 「おっ、いけそうじゃない」 「じゃあ、本番行きま〜す。どうぞ〜」 そして。 ♪ドゥワァ〜〜 ミスった。 ミスった。ミスった。ミスった。 テストでうまくいっても本番でミスっては何にもならない。 それでもどうにか2時間かけて問題の2小節はクリアした。 が、後半部分でリズムがよれた。 「もう、だめだ」 村松はギブアップした。 「まあデモだから、いいよ。オッケー」 70年代も後半になれば、もっとぎりぎりのパンチインが普及してくるので、細かい録 り直しも可能だが、この当時このスタジオの設備ではそれは無理なことだった。 村松が2時間の格闘でへばってしまったので、つぎのコーラス入れはあとにまわすこと にした。 その間、山下はスタジオ内を物色する。 そしてスタジオに常設してあるハモンドオルガンとヴィブラフォーンを見つけた。 「すいませ〜ん。ここにある楽器、使ってもいいですかぁ」 「はい、どうぞ〜」 急きょ「夏の終りに」にハモンドとヴァイブを入れることにする。 「こりゃまたゴージャスになるねぇ」 「ほんと」 「オシャレともいえるね」 「ほんと、ほんと」 さらに山下はスタジオの隅にカバーをかけて置いてあったティンパニーを見つけた。 「これもいいですかぁ」 「どうぞ〜」 もともとはドラマーである山下は試しに叩いてみた。 付属のマレットで。 ティンパニーの中央をおもいっきり。 バシ!!! 皮がやぶれた。 ・・・なんだよ、このティンパニー。皮が古いじゃん・・・ 山下はマレットをぶらぶらさせながら、そう思った。 2台あったので、もう一方も試してみる。 バシュー!!! また、やぶれた。 ・・・あ"〜〜〜〜〜あ"〜〜〜〜〜〜@@@@@@@・・・ 山下は知らなかったのだ。 皆サ〜ン。てぃんぱにーハ中央部分ヲ叩イテハイケマセ〜ン。端ヲ叩クモノデ〜ス。中 央部分ヲ叩クト、皮ヤブレマ〜ス。あーめん。 |