Chapter three : sixteenth episode



 メンバーがコーヒーを飲みながらくつろいでいる横で山下は頭でリズムをとりながらし
きりにフレーズを考えている。
「そうだ!」
 突然の声に全員山下を注視するが、本人はいっこうに気がつかない。
「・・・ここで8小節あれを・・・で、ここからコーラス・・・後は・・・」
「よし、できた!やるぞ」
「え〜、もうちょっと休もうよ」
 鰐川が不平を言う。
「いいからや・る・の」
 山下は取り合わない。

「さっきのところからだけど、まずこういうリフをやるのね」
 と言って山下がリフを弾く。
「ふむふむ」
 村松はなぞって弾いてみる。
「で、最後の小節はギター2本でハモる」
「わかった」
「じゃあ、せ〜ので」
 二人で合わせて弾いてみた。
「おっ、いいじゃん」
 村松は喜ぶ。
「で、これを2回やったら、メインテーマのところをコードだけ循環させてコーラスをや
る。あっ、テーマは弾かなくていいから」
「ちょっとター坊、テーマの部分くり返しててくれる」
 大貫がピアノでコードを循環させる。
「音列はこうね。1、3、5、7。レ、ファ#、ラ、ド#。下からワニ、村松君、ぼく、
ター坊の順番ね」
「で、せ〜のじゃなくて、また時間差でやるから。ワニが2小節目の頭で入って、村松君
が2拍目の8分裏、でぼくが入ってター坊が3小節目の2拍裏」
「じゃあ合わせてみようか」
 何回かくり返すとピッチもタイミングもはまってきた。
「オッケー。で、これに歌詞がつくの」
「え?どんなの?」
「ちょっとやってみるから」
 ♪あ〜ま〜あ〜いシュガー!
「え〜!甘いシュガー?」
 全員で反応した。
「いいから、いいから。やるね」
 で、4人で合わせてみる。
 ♪あ〜ま〜あ〜いシュガー!
「あっははは。面白いけどカッコイイ」
 みんな笑う。
「あっははは、あははは。あは、もうダメ。あははは、ピアノ弾けない。あっはは」
 大貫がとくに笑う。
 しばし笑いの発作が続く・・・。
「で、これで終わらないの。この後、こんどはシュシュシュ、シュシュシュ、シュシュシ
ュシュー、シュガーってなるわけ」
「わ〜お」
 で、その部分を集中的に練習したあと続けてやってみる。
 ♪あ〜ま〜あ〜いシュガー!
 ♪あ〜ま〜あ〜いシュガー!
 ♪シュシュシュ、シュシュシュ、シュシュシュシュー、シュガー
 ♪シュシュシュ、シュシュシュ、シュシュシュシュー、シュガー
「きまった〜!」
「すげぇ!」
 みんな充足感にひたっているところに野口が聞く。
「ところでこの曲、タイトルは?」
「シュガー」
「ギャアーッハハハハハ!」
 またも笑いの発作が続く。