第二章:第二十一話



 正月気分もようやく抜けた1月半ば、N宅で遅まきながらの新年会をやることになった。
 各自てんでに成増に集まる。
 一番乗りは武川と、和服を身にまとった武川の彼女。
「○○ちゃん、すご〜い。自分で着たの?」
 と、N。
「わたし日舞もやってるから、和服くらい自分で着られるの」
 彼女はバレエと日舞、両方やっている。
「そうか、日舞もやってるんだった。さすがだね」
 飲んべえの武川が口をはさむ。
「そんなことより、今日は煮しめと雑煮の材料持ってきたからさ」
「そいつはいいね。さっそく一杯やろうか。まだ早いけど」
 そこへ鰐川が到着。
「わぁ〜、○○ちゃん、色っぽ可愛い」
「はいはい、いいからさ。そこ座って」
「まずは4人で乾杯だ」
「ぼく酒飲めないんだけど」
 鰐川は下戸である。
「まぁまぁ、正月くらいつきあえよ。形だけでいいから」
「んなわけで、新年明けましておめでとう。かんぱ〜い!」
 3番手に村松がやってきた。
「おめでとさん」
「はい、これ。我が家自慢の松前漬け」
「おっ、松前漬け。だったらワインより日本酒だな。ちょっと待ってて」
 と言ってNが母屋に日本酒を取りにいった。
「あれ〜?この松前漬け、カズノコ入ってないよ〜」
 つまみ食いしようした鰐川が素頓狂な声をだす。
「ば〜か。松前漬けはねぇ、スルメと昆布と人参だけでいいの。カズノコ入れるのは邪道です」
 と村松が切り返す。
 横でやりとりを聞いていた武川は「そんなもん、どっちもありなんだよ」と思いながら苦笑いをうか
べている。
 そこへNが日本酒を抱えて戻ってきた。
「はい、お待ち。N家ゆかりの帝松」
 トクトクトクトク。
「くぅ〜。うめぇ」
「やっぱ正月は日本酒でしょ」
「ちょっと甘口だけど」

 そうこうしてる内に金子と山下が到着。
「これで全員揃ったな。じゃあ、あらためて乾杯を・・・」
「の前にだなぁ」
 Nが乾杯の音頭をとろうとすると、山下が割って入る。
「ここのNさんちだけど、いつまでも練習のたびにNさんちに集合っていうんじゃ体裁悪いからさ」
「・・・」
「だからこれからはサーフィン・ラビット・スタジオって呼ぼうと思うんだ。自主製作盤の裏にもクレジ
ットしちゃったし」
「ふ〜ん。名前が変わっただけじゃん」
 と、鰐川。
「いいの。物事は名前から入るのが肝心なんだから」
「まぁ、いいじゃん。カッコイイよ」
 と、Nは賛同する。
「じゃあ、決まりね」
「あらためて、サーフィン・ラビット・スタジオにかんぱ〜い!」
「かんぱ〜い」