「今日はカレーです」 材料をかかえて戻ってくるなりNはテキパキと料理を始めた。 「えーと、僕はタマネギを刻むから、ワニ手伝って」 「イエッサー」 「そこのニンジン、セロリ、ニンニク、ショウガを全部すりおろして」 「イエッサー」 「金子は米といどいて」 「あの〜、僕もなにか」 村松がその場の雰囲気で申し出る。 「村松くんはまだいいよ。そのうち慣れたらやってもらうから」 タマネギを刻みながらNがこたえる。 「あっ、ちょっと待って。やっぱりそこのコンビーフの缶を開けといてくれる」 やがてタマネギを炒める音が聞こえはじめる。 「これが一番しんどいんだよなぁ」 Nが誰にともなく話す。 「中火でじっくりキツネ色になるまで、焦がさないように炒めないとね」 30分後。 「そろそろかな」 「ここですりおろした野菜を入れて、それからコンビーフを入れてっと」 「あっ、忘れてた。トマト、トマト」 セロリをつまみ食いしていた鰐川に村松がこっそり聞く。 「ねえ、ここに集まる連中はみんな料理するの?」 「う、うん。まあね」 そばにいた金子が茶々をいれる。 「そんな事ないですよ。武川くんは特別。Nさんはまあまあ。後はちょっと手伝うくらいですから」 それを聞きつけたNが言う。 「あのねえ、今の時代は男も料理くらいできないとダメなの。わかるかなぁ」 「ふ〜ん」 「料理だけじゃなく、洗濯、掃除、家事全般できないと。そうじゃないと好きな事やっていけないで しょ」 ・・・う〜ん、よくわからない論理だなぁ・・・残りの全員が思った。 さらに1時間後。 「あとはこの無唐のピーナッツペーストを入れて、ガラムマサラを・・・これくらいかな。で、塩もこれく らいっと」 味見をした。 「うぉっ!うまい!」 「よし。あと10分で完成」 「お〜い、みんなぁ、飯の準備してくれぇ」 Nの号令で各自ご飯をよそったり、サラダを盛りつけたり、飲み物の準備をしたりし始める。 「いただきま〜す!」 「わ〜。うまい」 「やっぱりNさんのカレーは最高だね」 みんなの反応につられて思わず村松も言う。 「具がなくて、しかもこんなサラサラしたカレー初めてだけど、すっごくうまいなぁ〜。これ」 「そうでしょ。うまいでしょ。どんどん食べてよ、みんな」 バク、バク、バク。 シャキ、シャキ、シャキ。 ゴク、ゴク、ゴク。 〜ピンポ〜ン〜 「なんか美味そうな匂いしてるなぁ」 山下がレコードをかかえて入ってきた。 |