vol.10


 ステージではキャラメルママの演奏が始まっている。
 細野晴臣と鈴木茂を中心に、ドラムスに林立夫、キーボードに松任谷正隆を加えた新ユニットだ。あまり通 常のバンド活動はおこなわず、おもにレコーディングセッションを活動の場にするという。これも日本では初めての事だろう。
「ね、キャラメルが終わったら、次ははっぴいえんどの番でしょ。見に行こ」
 と、ター坊。
「う〜ん、まぁそうだなぁ・・・。」
 あまり気乗りしなさそうな、山下。
「あれ〜。どうしちゃったのかな〜。なんか変。」
「ライブ終わった直後の興奮がさめてさ、反省モードに入ってるわけよ。いがいとクールだから。」
 フォローするベースの鰐川。
「ふ〜ん。ま、いいけど。でも、でも。最後なんだから見に行こうよ。ね、ね。」
「わかった、わかったよ。じゃあ袖からちょっと。」
「だめよ〜。袖からじゃ。PA通った音じゃないと全然わかんないし、だいいちメンバーの演奏するとこ見れないじゃない。」
 そこにトイレから戻ってきた脳天気男のムラマツ。
「ふ〜、やっと下痢おさまったみたい。やっぱ俺って繊細。あれ、何もめてんの〜。」
 ちょっと場違い君であった。


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