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「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band / The Beatles」
は宅録基礎必修アルバム!
 このアルバムがリリースされた1967年にはまだ生まれていなかった人も多いだろうし、ましてやその頃の録音機器と技術の状況なんて、ぼくだって本で読んだり、レコード聴いて勉強するってことをしていなければ、全然知らなかったことですが、この時代最先端のプロフェッショナルなレコーディング技術は現在の宅録とかぶるところが多くあります。この時代にはMTRが4トラック、8トラック、16トラックと進化して、マルチトラックのレコーディングが可能になったので、コンサート・ツア−をやめて、いわばレコーディング・スタジオひきこもりオタになったビートルズのメンバーが700時間ものスタジオ時間をかけて、作ったのがこれなんですな。
 も ちろんビートルズ以前にも様々なアレンジ方法を試したり、斬新なコード進行を考えたりした人は多くいるのですが、1曲に時間をかけてアレンジし、家に帰って聞き直しては考え方を変えて、編集したりということができたのは、時間もあり、マルチトラックが使えるようになったこの人たちが初めてだったのです。で、このアルバム以前にもいろんな実験を積み重ねてきて、それの現実的な組み合わせがこのアルバムというわけです。
 このアルバムは4トラックで録音したそうですが、実際には何10トラック分もの演奏が収められています。

 実際的な方法としてはピンポンとか、バウンスとか呼ばれる方法で通常4トラック内に録音可能な演奏よりも多くの演奏を録音しています。これは4トラック録音できるレコーダーを使うとすると、

   1. 3トラックを使って3種類の演奏を録音する
   2. 3トラックをミックスして、残りの1トラックにコピーする
   3. 3トラックの録音内容を消去する
   4. 3トラック中の2トラックを使って2種類の演奏を録音する
   5. その2トラックをミックスして、3トラック中残りの1トラックにコピーする
   6. その2トラックの録音内容を消去する
   7. 消去した2トラックに2種類の演奏を録音する

ということで、7トラック分の演奏を録音できるというものです。工程4まできたところで工程5に行かず、工程3に戻れば、音質はどんどん劣化しますが、より多くのトラック分録音することが可能になります。
 とはいえ、それでは音質が劣化し過ぎるので、このアルバムでピンポンしてオーバーダビングするトラックを稼ぐ時には、4トラックに録音されたものを一度オープンテープにミックスして、4トラックの別の部分にコピーするという方法をとり、元のトラックは全て録音時の状態をキープしておき、最終ミックス時(といっていいかどうか分かりませんが)には再度バランスに注意して作業をやり直したといいますから、実質同じようなことを一台のレコーダーで行うには8トラックのレコーダーで、ヴァーチャル・トラックが必要になるでしょう。
 「で もどうしてビートルズなの?オアシスだって、マルーン5だっていいじゃんか?」という疑問が出てくるでしょうが、その理由はこの人たちがあまりにも有名で、他のアーティストとは比べ物にならない数の出版物が手に入るということです。ちょっと挙げただけでも「ビートルズ・サウンドを創った男 耳こそはすべて」、「ビートルズ レコーディング・セッション」、「全曲解明!!ビートルズサウンズ大研究〈上〉」などの本がインターネット上の通販サイトでカンタンに入手でき、具体的なコード進行やアレンジ、レコーディング方法などを勉強することができます。また、アルバムでいうとこのアルバムが一番話題になり、手に入るデータの量もダントツに多いのです。
 ま たこの人たちの作品の場合、出版物だけでなく、ブートレグの数がまたハンパではありません。一説によると、メンバー中の一人が友人に聞かせたテープが流出したためと言われていますが、このアルバムの曲に限らず、そういう作業中のダビング用トラックやダビングしたブラス・セクション、ストリングスのみのオケが入っているブートも数多くあり、どういう状態でレコーディングが進められたのかが非常に良くわかります。中には「A Day In The Life」や「Strawberryfields Forever」のように2曲の別の曲を1曲にまとめてしまったというようなトラックを収録しているものもあり、その編集前と編集後を聞くことができます。
 そ ういう色々なワザも重要ですが、プロフェッショナルなエンジニアさんたちが録音しているので、基本的なポイントはもちろんクリアしています。宅録しているとどうしても、どこまでが自己確認用の録音で、どこからが人に聞かせるもの、さらには作品という境界線を引くのが難しく、普段からクセをつけておくようにしないと、録音レベルなどの基本的な設定がおろそかになってしまいがちなので、気をつけましょう。具体的には録音レベルは歪みが発生しないギリギリの大きいレベルが一番良いので、1曲の中で一番レベルの盛り上がる部分でチェックするようにてください。
 僕 達がコメントを書いている、Net Sproutに送付されたデモテープの中にも、MTR録音時にレベルが適正でないらしく、音質がカセットテープMTRを使用した場合のように劣化しているものが良くあります。これは弾き語りの人に多く、普段特別にオケを創ったりしない人にとっては、レベルを調整したりするのはかなり面倒なことかもしれませんが、音が歪んでいたり、音質がモコモコだったりすると聞き辛く、詳細なコメントができないので、注意しましょう。
 音 量が小さいなら大きくすれば良いではないか?と思う方も多いかもしれませんが、録音時のレベルが低いと、再生時にボリュームを上げた時、機材内で発生するシステムノイズまでが増幅されて、全体としては音質が劣化してしまうのです。するとMTRでは歌は歌、ギターはギター、という風にバラバラに別トラック録音しているので、一つ録音レベルの低いトラックがあると、他のトラックもそのレベルに相応したレベルに下げなくてはいけないというような事態も起こってしまうのです。これではいくらCDが音が良いといっても、元と変わらないわけですから、音質が悪いものはそのまま音質が悪いものとして聞く人の耳に入ってしまいます。
 さ らにMDにコピーしたり、CDに焼いたりする時にもデジタルのままコピーしていれば、音質には何も変化が起きないのですが、そうはしていない人の方が多いようです。ということはこれも一度アナログに戻って、もう一度デジタル化しているわけで、ここでまたレベルが低いと、システムノイズが加えられることになり、聞くときには雑音の嵐となってしまうわけで、これではデジタル録音の意味がありません。みなさんもその辺を一度チェックしてみてはどうでしょう?やり方がわからない等の質問、大歓迎します。「若きミュージシャンの悩み」か、「ファーマーにメール」からどうぞ。
「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band」収録曲
1. Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club
   Band
2. With A Little Help From My
   Friends
3. Lucy In The Sky With Diamonds
4. Getting Better
5. Fixing A Hole
6. She's Leaving Home
7. Being For The Benefit Of Mr Kite
 8. Within You Without You
 9. When I'm Sixty Four
10. Lovely Rita
11. Good Morning Good Morning
12. Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club
   Band (Reprise)
13. A Day In The Life




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