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年も仕事柄いろいろなライブを見た。都内にはライブハウスが乱立しており、ライブ演奏をする場所には事欠かないこともあって、優れた演奏内容のバンドも多い。
夏に見た中期ビートルズのようなサウンドを持つバンドはリードヴォーカルに若干の非力さが目立ってはいたが、演奏とヴォーカルの配分も良く、アバンギャルドともいえる複雑和声が個性的であった。だが、一点だけがいただけない。
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のバンドのキーボード・プレイヤーはオールインワン型のサンプル波形エディット系キーボードを使って、ピアノの音色をメインに使っていた。その音色がどう聴いても「腕のぶっとい大男が全力で弾き、それにコンプを目一杯かけたようなサウンド」であったのだ。これ自体はもちろん悪いことではない。だが、それを弾いているのが、小柄なかわいらしい女の子であり、しかも涼しい顔で弾いているとなると、私のようなシーラカンス的スタジオワーク人間には問題だ。
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もそも語源からして「ピアノ・フォルテ」なのであるから、ピアノには強弱があるのが普通だ。サンプリングができる以前はそれを目一杯弾き、コンプでギチギチなサウンドにすることによって「全部フォルテ」な楽器を表現していたわけだが、サンプリングという方法が生まれて以来、「すでにフォルテ」な瞬間を捉え、これをいとも簡単に再現できるようになったのである。
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が、キーボードのメーカーとしては「この音色を弾くときは一生懸命に弾いているフリをしてください。」などとユーザーズ・マニュアルに記するわけにもいかない(どういう状況でサンプリングされているか知らないかもしれないし)ので、こういった楽器が登場した後に音楽を始めた人であれば、ただの一音色であり、ごくごく当たり前に弾くのであろう。
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はいえ、ルックス的にはやはり苦労して弾いている雰囲気は欲しいものだ。別にチョーキングをしてもいないのにチョーキングの音がするギターがあったら、かっこ良いと思うだろうか?
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器の最終的な形としては演奏者の想いが伝わって勝手に音が出る楽器なのかもしれないが、いろんなことを考えていくと、これにプラス筋力などの生物学 + 物理学的要素もできれば考慮して欲しいと思うのは私だけかなぁ?
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