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リヴォンの新作にし〜〜びれちゃった!

 ア マゾンより届いたリヴォン・ヘルム(LEVON HELM)の最新作「エレクトリック・ダート」(ELECTRIC DIRT)を聴いたらタイトル通りに、体中を電気(Electric)が走った。

 グ ラミー受賞の前作「ダート・ファーマー」(DIRT FARMER 写真中)よりわずか2年でこんな傑作を完成させるなんて、リヴォン翁には喉頭癌の後遺症なんてまるでない!どころかむしろ絶頂期を迎えたのではあるまいか。

 ア ルバムはいきなりごきげんなグレイトフル・デッドのカヴァー「TENNESSEE JED」で幕を開ける。この曲をはじめ、ほとんどがカヴァーであるが、オリジナルより、よりリヴォンのオリジナルのように聞こえるリヴォンのオリジナルアルバムである(ややこしくてゴメンね)

 そ のカヴァーの栄誉にあずかったのは、さきのデッドの他にステイプル・シンガース、マディ・ウォーターズ、ハッピー・トラウム、スタンレー・ブラザーズ、ランディ・ニューマン、オラベル(前作に引き続き、このアルバムでも親父をしっかり支えるリヴォンの孝行娘エイミーの所属する僕の大好きな若手のバンド)・・・どの曲を聴いても、体を揺らしながら楽しげにドッタンドッタンドラムを叩くリヴォンの勇姿が目に浮かぶようだ!それに何といっても歌が楽しい!前作は一滴の甘味料も入らず、誠に厳しい、鬼気迫るアルバムの作風に思わず居ずまいをただされたが、今回はひざをくずし、バーボンを飲みながら聴いてもよさそうである。

 ど の曲も素晴らしいが、とくに4曲目「GOLDEN BIRD」(ハッピー・トラウム作曲)のアパラチアン・ブルース(そんな言葉はないが)には涙がぽたる。名作音楽映画「ソングキャッチャー」の世界そのままの、イギリス諸島からの移民(見方を変えればイギリス諸島からの棄民)のせつない心情がアパラチアン・ダルシマーやハーモニウム、オートハープ等アメリカの民族楽器とでも言うべき楽器群に載せて歌われるリヴォンの歌声には胸がしめつけられる。

 参 加ミュージシャンもラリー・キャンベルのマルチプレイヤーぶりは相変わらずだが、先述の愛娘「エイミー・ヘルム」やラリーの奥方「テレサ・ウィリアムス」のコーラスワークもドラマチックに音楽を盛り上げる。また6曲目「STUFF YOU GOTTA WATCH」で絶妙のアコーデオン・ソロを聴かせるブライアン・ミッチェルも素晴らしいのだ。

 ラ ンディ・ニューマンの「KINGFISH」やラリー・キャンベルの楽曲「WHEN I GO AWAY」など、全編にわたってブルースやブルーグラス、アパラチアンにカントリーブルース、それにニューオリンズまで、アメリカ南部に生まれたリヴォンの血と骨と肉をなす音楽が、文字通り生き生きと、しかも、たった今できあがったかのようにみずみずしく甦る。ラスト曲「I WISH I KNEW HOW IT WOULD FEEL TO BE FREE」のホーンアンサンブルはアラン・トゥーサン!まさにこの傑作アルバムを締めくくるにふさわしい出色のでき!

 こ れで、来年のグラミーのカントリーアワードは、このアルバムとバディ&ジュリー・ミラーの「WRITTEN IN CHALK」(写真右)一騎打ちになった・・・あれ、そう言えば、この二人はリヴォンの前作で素晴らしい夫婦コーラスで参加していたんだったね!

 微 笑ましいのは、このサウンド、なんともドラムとリヴォンのボーカルのバランスが大きいアンバランスなミックスになっていることだ。

 お そらく、このアルバムに参加したすべてのミュージシャンの「もっとリヴォンのドラムが聴きたい!」とか「もっとリヴォンの歌が聴きたい!」という強い想いがエンジニアに乗り移り、思わずドラムとボーカルのフェーダーを強く突かせたのだろう。

 い いのだ、いいのだ、そのアンバランスこそがこのアルバムにふさわしいベストバランスなのだ。誰も文句言わないさ・・・

 今 年のモストアンバランス・ミックス大賞おめでとう!


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