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慶祝!矢野顕子のグラミー受賞を心から喜ぶ!

 わ かっております!矢野顕子の「akiko」がグラミーのグランプリを取ったわけではないことくらい・・・

 今 年のグラミー賞・主要4部門の中でも最も重要な2部門「RECORD OF THE YEAR」(カテゴリー1)と「ALBUM OF THE YEAR(カテゴリー2)を文字通りのワンツーフィニッシュで獲得したのは、ROBERT PLANT/ALISON KLAUSS」の「Raising Sand」であった。

 驚 くべきことにこのアルバムは2年連続のノミネート(実は前年度のグラミーでもノミネートされている。しかもグラミー獲得済み!昨年の僕の日記にも「おめでとうアリソン!」と書いた。ちなみにカテゴリーは「BEST POP COLLABORATION WITH VOCAL」)されていたから「ひょっとして獲得するってこと?・・・・・つまりグラミー選考委員から、このアルバムにもっとたくさんグラミーを上げたくなったからもう一回ノミネートし直してちょんまげコールが澎湃としておこったのではないか?」という邪推と「でも、まさかそんなことはアルマイト鍋よね!」という想いが交錯していたのだが、その「まさかね!」が実現したのだから嬉しくないわけがない。

 しかも今回は5部門にノミネートされ全部門制覇・・もちろん、グラミーの華「RECORD OF THE YEAR」と「ALBUM OF THE YEAR」両賞獲得はすごいことだが、こちらはライバルが弱い!

 むしろ強敵めじろ押しのカテゴリーは上記以外のこちらの3部門であろう。

 C ategory 69

Best Contemporary Folk/Americana Album
(Vocal or Instrumental.)

 Day After Tomorrow/Joan Baez

 I, Flathead/Ry Cooder

 Sex & Gasoline/Rodney Crowell

 All I Intended To Be/Emmylou Harris

 Raising Sand/Robert Plant & Alison Krauss

 ライおじさん、エミルー姉さん、ロドニー兄貴、すべて僕が昨年購入し、後に愛聴盤になったものばかり(ジョーン・バエズさんのみ未購入)・・・個人的には誰が受賞してもエートス!

 続いてこちらのカテゴリー

Category 8

Best Pop Collaboration With Vocals
(For a collaborative performance, with vocals, by artists who do not normally perform together. Singles or Tracks only.)

 Lesson Learned/Alicia Keys & John Mayer
 Track from: As I Am

 4 Minutes/Madonna, Justin Timberlake & Timbaland
 Track from: Hard Cand

 Rich Woman/Robert Plant & Alison Krauss
 Track from: Raising Sand

 If I Never See Your Face Again/Rihanna & Maroon 5
 Track from: Good Girl Gone Bad: Reloaded

 これまたアリシア・キーズ、ジョン・メイヤー、マルーン5、マドンナ、ジャスティン・ティンバーレイクなど、僕でさえ名前を知っている(CDは持っていない)世界的アーティストによる豪華絢爛コラボレーションアルバム!

 そ してトドメはこちら!

Category 39

Best Country Collaboration With Vocals
(For a collaborative performance, with vocals, by artists who do not normally perform together. Singles or Tracks only.)

 Shiftwork/Kenny Chesney & George Strait
 Track from: Just Who I Am: Poets And Pirates

 Killing The Blues/Robert Plant & Alison Krauss
 Track from: Raising Sand

 House Of Cash/George Strait & Patty Loveless
 Track from: Troubadour

 Life In A Northern Town/Sugarland, Jake Owen & Little Big Town
 Track from: Love On The Inside [Deluxe Fan Edition]

 Let The Wind Chase You/Trisha Yearwood & Keith Urban
 Track from: Heaven, Heartache And The Power Of Love

 こちらは、ジョージ・ストレイト、トリーシャ・イヤーウッド、キース・アーバン、パッティ・ラブレスなど、コンテンポラリーカントリーの大スター(こちらはCD持ってます)のオンパレード!!

 いやはや、あまたの素晴らしいライバルたち、そのビッグネームを鎧袖一触、まとめてひょひょいと屠ったのはお見事です!

 だが、実はこのアルバムには双子の妹と呼ぶべきもう一枚のアルバムが存在する。

 それは、「Raising Sand」に引き続き、プロデューサーもエンジニアもドラムもギターも、スタジオも、ミキサー卓も、プラグもケーブルもエフェクターも全部おんなじメンバー、システムによって制作された矢野顕子の「akiko」である。

 このアルバムについてはもう何度もコラムに書いているが、その中でこんなエピソードを紹介した。

 彼 女がT・ボーン.バーネットにアルバムの制作を依頼するに際し、何曲かデモ曲を聴いてもらった時のこと・・・

● それに対してバーネット氏からはどんな反応があったのですか?

「はっきりと彼が“こういう方向で”と言ったことはないんです。ただ最初に用意した曲を演奏して聴かせたときには、あまり両手をあげて喜ぶといった反応ではなかった。“これはもしかして私が間違っているのかな?”と思いました。彼はそのとき、自分がやっていたプロジェクトの音を聴かせてくれて。それを幾つか聴いているうちに、私が最初に書いていた曲は“今までの私”であって、そういう曲は自分でやれば?ということなのかなと。新しい自分をTボーンに作ってもらうのにふさわしい曲を作ってこいということなんだな、と私は解釈しました。それまで作りためていた10曲をオクラにしたんです。」

 以上、「Sound & Recording Magazine 12月号」(?2008リットーミュージック)P36より引用

 ・・・この、矢野顕子に「それまで作りためていた10曲をオクラに」させたアルバムこそ、その時L.A.で制作進行中だったアルバム「Raising Sand」だったのだ!だから「akiko」にはツェッペリンの「Whole Lotta Love 」が収録されているのだ!(と断定調で書いてますが、すべては僕の想像です。ただ、T・ボーン・バーネットのオッカケである僕の調査では、矢野さんがLAでTBBにあった頃、彼が制作中であったのは、この「Raising Sand」か、ジョン・メレンキャンプの「LIFE DEATH LOVE AND FREEDOM」のどちらか、あるいはどちらも、です)

 僕 は、このエピソードについてさきの日記にこうコメントした。

「 まるでシスティーナ礼拝堂の天井に描きかけたフレスコ画を「これが描きたいわけではない!」と気づくやいなや、それまでの絵画を壁ごと削り取り、すべての助手をクビにし、今度は一人であの傑作絵画群を描き直したミケランジェロの話を想起させる、すさまじきエピソードである。

 たかが、一介のロックミュージシャンにルネッサンスの大天才ミケランジェロの例えはおおげさな!という意見に僕はくみしない。

 矢野顕子はTボーンに「曲を書き直したらどう?」と言われたわけではない。ただそのわずかな表情の揺れから、瞬時にそのメタファを明確なメッセージとして理解し、そこそこの作品であったろう10曲を何のためらいもなく破棄し、その後のわずかな時間で、これほどの傑作曲を書いたのだ。これこそまぎれもない天才の資質である。 」

 と、書いたが、いまでもこの思いに些かの変わりもない。まさに「天才は天才を知」り、また「天才は過ちを認めるのにいささかも逡巡することがない」のである。

 僕 にとって「akiko」と「Raising Sand」は二曲一双の屏風のごとき、二つで一つの「きんさん・ぎんさん」兄弟(姉妹)アルバムである。

 その片割れ「きんさん」がグラミー賞の最重要2部門を制覇した、ということはそのまま、もう片方の「ぎんさん」アルバム「akiko」が世界制覇を果たしたのと同じ意味を持つのである。

 だから今宵、僕は“ 矢野顕子さん!グラミー賞受賞おめでとう!ホントによかったですね! ”と言祝ぐのであります。


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