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幸せの黄色い「リヴォン・ヘルム」



 ・ ・・といっても、別にリヴォン・ヘルムに黄疸の症状が出ているわけではないが、本年度の掉尾(ちょうび、と読んでね)を飾るのは、今年の僕の日記では三度目の登場となるリヴォン・ヘルムの約30年前の畢生のライブアルバム「-AND THE-LIVE AT THE PALLADIUM NYC New Year’s Eve 1977」(写真左)である。
 一 聴して「すっ、すっげぇ・・こんな音源があったんだぁ!ありえねぇ〜〜!」とビックラたまげてスッカリ腰を抜かす。昨年4月にリヴォン・ヘルム・スタジオのレーベルから発売されていたらしいのだが、いやぁ〜知らなんだ。
 リ ヴォン・ヘルム&ザ・RCOオールスターズによるCDには同バンド名義によるスタジオ録音盤がある(写真中)。こちらも素晴らしいのだが、この、まさにオールスターズの名がふさわしい錚々たるメンバーが集まれば、当然緊張感バリバリ、丁々発止の火を吹きそうなアルバムになりそう(と誰だってそう思うよね?)なものなのに、逆に、すごくリラックスして、和やか、というか穏やかなアルバムなのである。
 メ ンバーは、

 リヴォン・ヘルム (ドラム ボーカル)
 ポール・バターフィールド(ハーモニカ ボーカル)
 ドクター・ジョン(キーボード ボーカル)
 フレッド・カーターJr(ギター)
 スティーブ・クロッパー(ギター) from ブッカー・T&MGズ
 ドナルド・ダック・ダン(ベース) from ブッカー・T&MGズ
 ブッカー・T・ジョーンズ(キーボード) from ブッカー・T&MGズ

 <ゲスト>
 ロビー・ロバートソン from「ザ・バンド」
 ガース・ハドソン from「ザ・バンド」

 <ホーン・セクション>
 ハワード・ジョンソン(チューバ)
 アラン・ルービン(トランペット)
 ルー・マリーニ(サックス)
 トム・マローン(トロンボーン)

 ん〜〜ん、す・ご・い!
 こ のうち、「ブッカー・T&MGズ」から参加したスティーブ・クロッパー、ドナルド・ダック・ダンの二人と、ハワード・ジョンソン以外のホーン隊は、後の「ブルース・ブラザース」である。つまり、RCOオールスターズが母胎となって「BB」が生まれたのだ。加えて、どちらも”奇才”、というか”鬼才”というしかないドクター・ジョンにポール・バターフィールドが参加!さらにゲストとして「ザ・バンド」からロビー・ロバートソン(これが最後の共演になった)とガース・ハドソン!・・・これは昔の東映のお正月映画「オールスター清水港」のような超豪華メンバー(知らないだろうけど)である。これを「オールスターズ」と呼ばずしてなんと呼ぼうや!だが、さっき言ったように、新幹線なのに各駅停車でノンビリ旅をするかのようなおだやかぁ〜でゆったりぃ〜な、ある意味贅沢で味わい深いアルバムである。
 で 、今回のこのライブアルバム・・こちらは、まさにそのオールスターズ(ただし、上記のスタジオ盤と違って、「ザ・バンド」の二人とブッカー・Tは参加していない)が全身全霊でがっぷり四つに組んで全員が丁々発止、緊張感ありまくりの演奏と歌を繰り広げ、聴く方も全身汗ビッショリになる、新幹線並のスピード感と、エビ、ホタテ、イクラ、ケイジ全部入り!の超豪華海鮮丼の如き、ゴージャス感タップリの素晴らしいアルバムなのだ。
 今 後の「ザ・バンド」を、スタジオ録音中心で行くべき、と主張したロビーに反対し、「ライブ中心で行くべきだ」と主張したと言われるレヴォンが見事にその面目をほどこした、まことに胸のすくライブアルバム!
 両 アルバムに共通しているのは6曲あり、メンバーもほぼ同じなのだが、まったく風合いが違っている。好みもあろうが、今回のライブアルバムでは、そのリズムに下半身がガッツン直撃される。特にホーン・セクションのカッコよさ、と言ったらない!アメリカ(特に南部)の楽器演奏の奥深さと伝統に脱帽する。ま、考えてみれば、彼らは何百年にもわたって、ギターを弾き、ピアノを弾き、ヴァイオリンを弾き、金管楽器を吹いてきたのに対し、本邦は、たかだか、100年前から、一般庶民レベルで言えばほんの数十年ぐらい前からしか、西洋楽器に慣れ親しんでいないのだから「彼我の差」があるのは当然だが、この圧倒的なブラスセクションの迫力とグルーブを前にしては声も出ない。ダン・エイクロイドとジョン・ベルーシがRCOを観て「ブルース・ラザース」の構想を得たのも当然かも知れない。
 だ が、このアルバムの聴きどころは、実は、8曲目のポール・バターフィールドのデビュー曲「ボーン・イン・シカゴ」とドクター・ジョンの「ガット・マイ・モジョ・ワーキング」かも知れない。ポールはブルースフィーリング溢れる歌と血を吐くかのようなハープを吹きまくり、最初のギターソロでは決して乱れることのないフレッドのギターが華を添え、2回目のソロではスティーブ・クロッパーのテレキャスが唸りを上げる。10曲目の「ガット・マイ・・・」ではドクター・ジョンの魔法のような指は鍵盤上を跳ね回り、ニューオリンズのファンキーなサウンドと歌が、脳天を直撃する。下半身と脳天を直撃されて、すっかり「わたし壊れましたわ」(逆さから読んでも同じ・・ではないよ)
 ま さに記録(レコード)的な記録(レコード)で、これまで30年以上も未発表だったのも驚きだが、30年経って突如世の中に出てくるのも驚きだ。
 宇 田和弘さんの解説によるとこの音源は、91年に全焼したリヴォン・ヘルム・スタジオ(真ん中の写真の真ん中に描かれているのがそれ)の地下室に保管されていたため、消失をまぬかれたのだそうだ。まさに「ザ・バンド〜奇跡の軌跡」の一つと言えるだろう。
 解 説には「このほかにも多くの貴重な音源が存在し、今後それらがリヴォン・ヘルム・スタジオを通じてリリースされる予定だ」とある!まさにもう一つの「ベースメントテープ」!ギガント楽しみゆす!

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